なりにける


幻をみた

幻が降りる

影がある

座しているとそこに揺蕩う

蕩蕩と朗々と触れてこようとする

去って去ってそれから幾年が経っているか知らないけれど

貴方が貴方を去って

それからやっと何年かが経ったけれど


幻が降りてくる

盲々と悠々と広がろうとする

惑わし惑わしそれから幾年月がようやく経ったけれど

それでも失くなりはせずそこに

貴方を貴方が無に帰して

それからやっと何年経ったか思い出したけれど


それでもやっぱり幻が降りてくる

顔さえ匂いさえ声さえ姿形さえ彼方だというのに

まだそこにいる

叙情情緒豊かに詠わせる貴方に貴方は妬むというのに

それでもまた成り果てると

幻幻欠欠げんげんかくかく緋が垂れる


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