第3話
「・・・どうしたの?勇気くん、すごく暗いよ?」
ボーってしていた勇気は、目の前にみとが現れて、びっくりしたみたいだ。
「うわっ!みとさん!」
「なぁんだ。彼氏さん?待っててくれたんだー?やるねー?みとも。」
「ちょっと、瑠美ってば、まだ、彼氏じゃ・・・」
「へぇ?まだ、ってことは、ひょっとして、脈あり?」
「・・そ、そんなんじゃないよ」
なぜか、赤くなるうちの顔を見た瑠美。
「私、みとの友人の、戸川瑠美って言います!よろしくね。え~っと、
勇気くん?」
「・・・はぁ、よろしく」
なぜか、握手を求められ、素直に応じる勇気くん。
「わたし、彼氏とこれからデートなの。だから、わたしは、退散するね!」
そう言って、
(あとは、二人でごゆっくり~)
どこかで、聞いたセリフを、うちの耳元で、囁く瑠美。
「じゃあねー」
「・・・もう、瑠美ってば違うのに・・・・」
「・・みとさん、ちょっと相談が・・・・」
恐る恐るうちに、話しかける勇気くん
「・・・うん、そういう顔してる・・・・」
最近、ずっと、勇気くんと、メールのやり取りをしてわかったんだ。
勇気くんの、彼女への想いは、すごく切ないくらい伝わってくる。
でも、その気持ちは、ちゃんと彼女に伝わっていない。
うちは、こう思うんや。
きっといつか、素直になれる日が、来るんやないかって。
「・・何?みとさん」
「・・勇気くん、その彼女と、ケンカしたんやな?」
「・・うそ!なんで、わかる?」
「・・だって、うちのところに、連絡してくるのは、そういう証拠やで?」
「・・・なんでかな。みとさんとは、素直に話せるのに」
「・・もう!バレンタインまであと、一週間しかないんだよ?どうするの?」
「・・わかってるよ」
「・・あっ!そうだ!」
「・・ん?」
「・・なんか、変だと思ったんだよねー。2回目会ったとき、最初はメガネかけてなかったじゃない?勇気くん、やっぱりメガネかけない方が、イケメンだよ!ちゃんと、見せてよ」
うちは、勇気くんのメガネを外した。
「・・みとさん、勘弁してよー!俺、本当に、見えないんだよー」
「・・・えー!うそ!じゃあ、どれくらいなら、見えるの?」
そういうと、勇気くんは、うちの顔に顔を近づけて、
「・・これくらい・・・かな」
「・・・!?」
ドキドキしてしもた。
勇気くん、なにも考えずに顔を近づけるんだもん。
男子の顔が、こんなちかいの初めてだった。
「・・やっぱりメガネ返してみとさん!」
「・・だ、ダメや!こ、コンタクトにしやな」
「・・俺、どうもコンタクトは、苦手でさ」
また、苦手なものだ(笑)
「・・うちも、じつはコンタクトやで?勇気くんの気持ちは、わからなくもないけど」
「・・いやね、一回使ったんだけど、すぐなくしちゃって」
「・・じゃあ、美鈴さんに、会うときだけ、コンタクトにしたら?」
「・・なんで?」
「・見たことのない姿に、きっと、心動くよ!」
「・・・そうかなぁー」
「・・うん!きっと、大丈夫!」
うちは、まだ、ドキドキしていた。
「・・みとさん、顔、赤いよ?大丈夫?寒くなってきたし、熱でもあるんじゃ・・・」
勇気くんは、なんの前触れもなく、うちの額に手を当てて・・・
「・・だ、大丈夫や!あかんよ、勇気くん!うちは女でも、ただの友達やで?」
「・・・・・」
「・・・こういうことは、美鈴さんに、しやな」
「・・・ご、ごめん」
このときから、勇気くんのこと、好きになってしもたかもしれやん。
うちは、゛ただのともだち゛
そう思うことにした。
「・・あっ、そうだ。みとさん、この前、映画みたいって言ってたよね?」
「・・えっ?」
「・・・この前、遅くなって見そびれてしまった映画の鑑賞券が、福引きで当たったんだ」
「・・すごい!くじ運ええんやな」
「・・みとさん、よかったら、一緒に行かない?ペア券だし」
「・・・うちとで、ええの?」
「・・・俺、思ったんだよね。みとさんといるときは、素直になれるって」
「・・勇気くん、でも、それは美鈴さんと・・・・」
「・・いつも、相談に乗ってくれるお礼だよ?それとも、俺とじゃ、迷惑かな」
「・・・そ、そんなことない!」
うちは、思わず叫んでいた。
「・・それじゃあ、きまり。今度の日曜日、井の頭公園で、待ち合わせ」
「・・ふふっ、なんか、デートみたい」
デートの練習・・・かな。
「・・・ホントだ。おかしいな。
俺たち、付き合っているわけでもないのに」
それでも、勇気くんと・・・と思ったら、うちは、嬉しかった・・・・
最初で、最後のデート・・・・
「おやすみ、みとさん。」
「・・・おやすみ、勇気くん。」
すごく、嬉しい・・・
なのに、涙が、止まらない・・・・
それは、なぜ?
好きになったら、あかん人、やから?
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