第2話

岡本と 幸助 は、楽屋にいた。

「ねぇ、先輩?俺、すっごく不安なな点があるんやけど?」

「・・なんだよ、あの二人いい感じだったじゃん?なにも言わなくても、あそこまで仲良くなれるやついねぇよ」

「・・それは、そうなんやけど・・・」

「・・なんだよ!じれったいなぁー!なにが、不満なんだよ!早く言えよ!」

「・・・みとさんが、勇気のこと、本気になったら・・・」

「・・・本気になったらって、まだ、わかんないだろ?」

「・・勇気のやつさ、まだ、忘れてないんや。今でもまだ、好きなんかもしれやん」

「・・あっ?誰のことだよ」

「・・勇気の好きな人さ・・・」

「・・えっ?好きな人?」

「・・勇気が、片思いしてる人・・・三崎先輩の同級生なんや」

「・・・えっ?マジ?」

「・・・俺、ちょっと後悔してて・・・」

「なんだよ、岡本、あいつのこと紹介しろって言ったのはおまえだろ?」

「・・そうや?他の女を、紹介したら、きっと忘れられるからって、おれが、あいつに言うてしもたんや」

「・・岡本・・・、俺、もう疲れたよ。俺は、いつ素直になればいい?あの人には、伝わらないみたいなんだ」

そうやって、悲しそうな顔をする勇気を、ほっておけやんかったんや。

「・・俺、あいつのこと、余計に苦しめることになるんかな?」

「・・・」

「・・一度、好きになった人を、簡単には諦めれやんよな?」

「・・・岡本、もし、みとが、勇気ってやつに、本気になったら傷つくのはみとだ。でも、それは、彼の事情を知っているか知らないかでも決まる。それでもみとが、勇気のことを、好きだって言うなら・・・俺たちは、なにもできないかもしれない。

あいつさ、一途に俺のことを思っててくれたから。」

「先輩、俺はね、あの二人にはうまくいってほしい。だって、運命の出会いなんでしょう?」

「あぁ、みとは、少なくとも、そう思ってるよ」

「・・だったら、二人の運命の出会いを、信じるしかないよね?」

そう、信じるしかなかった。


ある朝

「みと、どうしたの?そのキーホルダー、かわいい」

「・・瑠美、おはよう」

「・・もしかして、例の“彼”からの、プレゼント、とか?」

「例の彼って・・・・」

「もう、みとってば、SAMURAIの のいとこってだけでも羨ましいのに、そのメンバーの岡本くんのクラスメイトを、紹介してもらえるなんて強烈だよ」

「・・・・確かに、それ聞いたときは、強烈やったわ。これが、うわさになったら、前より嫌がらせ、増えるかもしれやん。」


しかし、ロッカーのなかには、大量のトカゲ?と、思いきや?

「・・何?この量」

そこに入っていたのは、大量のファンレターたち。

「・・・ファンレター渡しといてください!・・・・って、うちは、召使いでも、執事でもないわ!マネージャーでもないんやから!」

「・・でもー、電話も、メールもできちゃうんでしょ?有名人になっちゃったよねー?みとってば。」

「・・・まぁ、違う意味でな。ええよ?後々困るのは、たぶん、兄ちゃんたちやしな。」

うちらが、そんな話で、盛り上がっている頃やった。

ある、カフェで、課題をやっている勇気くんのもとに近づく女性がいた。

「・・・」

「・・へぇ?やっぱり、本気で医者、目指しているんだね」

「・・ビックリした・・。なんですか?その、嫌みな言い方・・・」

「この前見ちゃったんだよねー。あんたが、女の子と、イチャイチャしてるの」

「イチャイチャなんて、してませんよ。別にいいでしょ?息抜きですから」

「・・あんたって、誰とでもそういうことするんだ」

「・・・頼まれるんですよ。1日だけ、付き合ってくれとか、彼氏のプレゼント選ぶの手伝ってとか。断る理由なんてないですよ。俺にはそもそも、彼女いないし。気を使わないし」

「・違うわよ!この前の日曜日よ」

「・・・みとさんは、岡本の知り合いですよ」

「・・なによ!私といるときは、いつも怒ってるくせに」

「・・・怒っているのは、美鈴さんの方でしょ?」

「・・・・」

「・・・僕は、美鈴さんとケンカしたくて話している訳じゃない!」

「・・わたしだって、別にあんたなんかと・・・・」

「・・だったら、おれが、誰といようと、誰と笑っていようと関係ないでしょう?

あなたには、もう付き合っている人がいるわけだし?」

「・・な、なによ、それ」

「・・・俺の邪魔をしに来たんですか?課題が進みません」

ガタッ

席をたつと、

「俺たちは、きっとうまくいかない」

「えっ?ちょっと、それ、どういう意味よ」

「・・・・あなたともし、付き合うことになっても、うまくいかなかったってことですよ。喧嘩ばかりで・・・お互い、疲れてしまうから・・・」

「・・・・・!?」

付き合っているわけでもないのに、まるで別れ話をしたような二人の空気だった。

勇気は、そのばから、いなくなってしまった。


「・・・な、なによ。わたしの前では、あんな笑顔・・・見せてくれないじゃない・・・・」

美鈴さんは、ここで、涙を流した・・・

「みとさん、俺はやっぱりダメです。彼女の前では、素直になれないよ・・・・」

そして、美鈴さんも・・・・

「・・・どうしてわたし、素直に言えないままなんだろう・・・・」

ふたりの気持ちは、まるでルーレットを反対方向に廻されたように、すれ違っていた。







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