奴隷

奴隷というものが当たり前に存在する世界では、それはある意味では自動車のような<耐久消費財>に近い感覚で扱われる。


なので、<まっとうな奴隷>については、確かに<物>扱いではあるものの、存外、大事にされることもあるのだ。自動車は<物>に過ぎないが、高価なこともあってそれなりに大事にするだろう? ここでの奴隷もそうだ。


性的な目的で利用される奴隷についても、実は割と大事にされるぞ。


あっちの地球では今は何やら、リアルに作られて価格も数十万円からものによっては百万単位になるような<ラブドール>などとと称される人形を使った風俗もあるが、そこでの人形も決して使い捨てにするわけではなく丁寧にメンテナンスを受けてなるべく長く使えるようにするよな。それと同じことだ。


もっとも、人間の形に似せて作られただけの安価なビニール風船のそれの場合だと、そこまで大事にはされないだろうがな。


ここまで言えばピンとくるのもいるだろう。藍繪正真らんかいしょうまが買ったような<いわく付きの処分品のような奴隷>については、<正規品>のそれに比べれば雑に扱われて、ほんの数年、下手をするとそれこそ使い捨てに近い使い方をするために買われる奴隷という面もあるのだ。


中には、本当に、己の加虐性を満たすためにわざとこの手の奴隷を安く買い、弄り殺すのを趣味にしている人間もいるという。


つまりは、お前が望むならこの<トレア>という少女奴隷を思うままにいたぶり尽くして殺したって誰も咎めないということだ。


さあ、どうする? 藍繪正真らんかいしょうま




だが、いざそういう形で<殺していい人間>を手に入れてしまうと案外その発想に至らないのか、それとも金を払って手に入れたから無意識のうちに惜しいと思ってしまうのか、藍繪正真らんかいしょうまはトレアに対して横柄には振る舞うものの、これといって暴力を振るう様子はなかった。


「お前、何ができんだよ」


入った時とは反対側の町外れまで来て途方に暮れて道端に座り、直立して少し怯えた様子で自分を見詰めるトレアに憮然とした表情で問い掛ける。


「家事炊事は一通りできます…あと、踊りを少し……」


「踊り…? どんなだ?」


「大道芸としての踊りと、それと…ご主人様を悦ばせるための踊り…です……」


「ご主人様を悦ばせるための踊り? なんだそれ?」


「もしよろしければ、お見せします……」


「ふ~ん、見せてみろ」


「はい……」


トレアは伏し目がちになりながらも、藍繪正真らんかいしょうまの前で深く頭を下げた後、ゆるりと体を揺らめかせだした。


なるほどそれは、


<ご主人様を悦ばせるための踊り>


だった。


艶めかしく体をくねらせたかと思うと、その付け根を見せ付けるかのように足を高く上げる。


すると粗末な服の下には何も着けていないのが分かったのだった。


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