#13. Chinese red
辛い。
そんな感想を抱きたくなる色だった。
ぐらぐら煮込まれた鍋のような、
ぐつぐつ煮込まれたカレーのような。
それは熱いラーメンの上や、白い豆腐の上に居ることもあるだろう。
見ているだけで暑苦しい、発汗を誘発する赤とオレンジの混ざりもの。
白いシャツは敵だ。
だから、高温注意報までもを振り切って、全身黒い服でやって来た。
僕はこれから、この際限無い辛さに立ち向かう。――そう。激辛汁無し担々麺に。
辛いものが大好きだ。
唐辛子も胡椒も山葵も辛子も豆板醤も。
環境に配慮した黒檀のmy箸を手に取り、黄色の麺を挽肉に絡める。赤と黄色が混ざりあう。心地いい音。混ざり合う香り。辛い。これは多分辛いだろう。そして美味しいに違いない、美味しいと信じている。箸を一度引き抜き麺の流れを整える。箸の先で数本摘まむ。引き上げる。肉が、油が、タレが、絡む。黄色に赤が入り混じってオレンジにキラキラ輝く。待ち遠しい時間は終わりだ。香ばしい。通り越して最早かぐわしい。唇に箸の先がつく。近づくだけで辛そうだ。鼻孔をカプサイシンが突き抜け、舐めずった舌先がほんの少しだけピリリと痺れる。もう駄目だ、待ちきれない。口を開ける、舌が絡む。黄色と赤とオレンジと、舌の朱色が絡み合う。ずるりと頬張って、しっかり噛み潰して喉に流し込んだ。通過する流動、喉の奥が熱を持つ。そうやって喉を侵しつつ、遂には胃酸へ落ちるのがはっきりと感じられた。
…………ふぅ…………。
まぁ、だからといって辛みが足りているわけじゃないから、備え付けの辣油もろもろを追加トッピングとして駆使するんですけどね!
こればっかりは仕方がないね!
お好みでどうぞ、だもの!
そうして、
激辛汁無し担々麺はデス担々麺になったと。
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