#11. Horizon blue


 青く、冷たく、まるでそれは透き通るような心地である。


 抱く感情の名を知らない少女は、自らの初恋をそうとらえた。甘くしょっぱくみずみずしい、豊かな感性と柔軟な発想力との協奏曲である。


 なぜ、甘いと言われて桃色や白を思い浮かべなかったのか。しょっぱくてみずみずしいことを、柑橘類に例えなかったのかは分からないが、それにしたって現時点ではっきりとわかっているのは、彼にはどう頑張って告白したところでふられてしまうであろうという純然たる事実に他ならない。


 青くて冷たくて透き通るような。これではまるで氷の心である。それも、凍えた氷というよりは、フワフワかき氷製造機に据えられる直前の、ちょっと表面が溶かされて反対側がクリアに見えちゃう感じの氷であろう。


 お酒の中の、まあるい氷であろう。


 ほどけて揺らぐ、陽炎のような水面だろう。


 からん、ころん。


 青く、冷たく、透き通るような、嫉妬。

 今日はまだ、情熱を氷に閉じ込めて。

 彼の隣で、友達のふりをする。



 薄氷の上を、素足で渡る。

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