第18話 支援物資

「なんかさ、無理くない? 強くて環境に適応した魔物を新しく作るのって無理くない?」


渾身の案が却下され、ブランは今更な事を言い出し落ち込んだ。確かに難しいが、それがブランの仕事だ。蘇芳達にはなんとも言えない。しかし支える事はできる。


「撫子、その包みを渡してくれるか?」

「は、はい。こちらですね」


ようやくここで風呂敷包みが役立つ。撫子はそわそわと風呂敷包みを差し出した。きっとこの中には何の案も浮かばない魔王のための物が詰まっているのだろう。

蘇芳はそれを受け取り、先程までブランが書き仕事をしていたであろうテーブルに追いて、包みを開きだした。


「ブラン。これを食べて頑張ってくれ」


包みの中は三段重ねの重箱だった。それを見てブランは瞳を輝かせる。


「うわぁ、蘇芳君のお弁当だぁ、約束覚えててくれたんだぁ」

「撫子もクララもどうだ。そろそろ腹が減っただろう」


蘇芳は予備の椅子を出し重箱を広げ、撫子達にも声をかける。しばらくあっけにとられていた撫子もようやく普段の冷静さを取り戻した。あの大事に運んで奪われかけたそれは、三段重に入ったお弁当だった。

撫子は驚きから震える。


「物資って、私が運んだそれって、お弁当だったのですか!?」

「ああ。話せなくて悪かった。けど公に言えない理由があってな。またこういう任務はあるだろうが、その時には魔石が中に入っているという事にしてくれ」


新種魔物創作カンヅメする魔王のための支援物資。ならばその内容は魔力や生物に関する何かだと思う。しかし実際は蘇芳が作ったお弁当である。だったら最初からそうと言えばいいのに、なぜ黙っていたのか。


「あ、そっか。最近魔王軍配下になった二人が、いきなり魔王とこんな仲良くちゃ他の配下に示しがつかないすよね。魔石を届ける任務って事にして、お弁当を届けるってことすね?」

「まぁ、そういうことだ」


勘のいいクララは理解した。

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