第13話 人間が四人



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それは撫子にとって、いつもならしないような失敗だった。

疎外感を感じて焦って先に進んで、罠は回避できたもののとんでもない人物達にからまれている。


「だから言ったんだよ。このダンジョンは穴場で、こんなお嬢ちゃんですら攻略できるような難易度だって」


人間の男が四人。一人はべとべとの液体まみれで花の香りをさせている男が言った。一番体格のいい、大きな武器を持った戦士だ。

お嬢ちゃんとは撫子の事だ。彼らは背後にいた撫子に気付き、行き止まりに追い詰めて道を塞ぐ。

普段の撫子ならそんな事態を回避できただろう。しかし荷物を抱えて、冷静さを欠いた彼女はすぐに見つかり追い詰められてしまった。

幸い、彼らには撫子は変わった身なりの少女にしか見えない。鬼の証であるツノが隠れているからだ。

しかし少女が一人こんなところにいる事に疑問は持たない。金稼ぎにダンジョンにやってきた冒険者とでも思っているのだろう。そして彼らは撫子の持つ包みに目をつけた。


「おいおい、このお嬢ちゃん怖がってるじゃねーか。お嬢ちゃん、大丈夫だよー俺らはその荷物が気になるだけだからねー」


猫なで声を上げたのは一番体の小さな男だ。魔石の込められた杖を持っていることから術士だと判る。どうやら男達は撫子がこのダンジョンでの戦利品を持っているとでも考えているらしい。


「道中はなんの収穫もなかったが、こりゃあいい。その包みはこの塔で拾った魔石か魔力の加わった道具だろう。その荷物は渡してもらおうか。お嬢ちゃんがその戦利品を手に入れられたのは、俺の眠りの術のおかげなんだから、当然の権利だろう?」


弦楽器を背負った男が言った。彼は吟遊詩人か何からしい。サキュバス達を眠らせる音楽を奏で、楽々とサキュバスだらけのダンジョンを攻略したようだ。

幸いにも撫子が人型魔物であることはバレていない。しかしそうなると風呂敷の中身が戦利品ではないと説明できないのが困った所だ。

いっそこの四人と戦闘し離脱を狙いたいが、今は大事な荷物がある。相手の戦力も未知数だ。


「お嬢ちゃん、俺は勇者で、この三人は俺の仲間なんだ。この塔はこれから制圧するんだが、その荷物はきっと役に立つ。それを名誉に思って譲ってくれないかい?」


ツンツン髪でやたら前髪の長い男が言った。勇者というものの真偽は知らないが胡散臭いのは確かで、うまいこと言って子供から荷物を横取りしようとしている。

ちなみに塔を制圧するには今偶然いる魔王を倒さなければならないのだが、それはこの男たちにできそうにない。

だが制圧前にどうしてもこの荷物が欲しいようで、撫子は困る。本当の話はできないし、荷物も渡せない。

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