No.108 勝負の夜
「あいつ成功したみたいだな……」
「そうですね」
ゾフィーを追い出して一時読書を楽しんでいたうちだが、また外が騒がしくなっていたので外をちらりと見るとピンク髪のかつらを被ったゾフィーがフレイやハオラン、エリカまで話しているようだった。
誰がこちらを見ているのか分からないため、じっくりと見ることはできなかったが、みんなどうも昨日の桜髪の少女がゾフィーと勘違いしてくれたようだった。
さて、ここからが勝負だな。
池から結構な人数が離れたとはいえ、完全に人がいなくなったわけではない。金の鯉を探している奴もまだいる。
夜に探しに来るとは思うが、ティナいわく今日は一段と冷え込むらしい。下手をすれば雪が降るとか。
そんな寒い時間帯にわざわざ外に出る奴なんているのだろうか??
いや、この学園にはいないだろう。
貴族の子息、令嬢ばっかりいる学園だ。
自ら風邪を引きに行くバカはいないだろう。
「ティナ、フード付きのケープを夜までに用意してくれるか??」
「はい、大丈夫ですが。あ、あの……アメリア様??」
「なんだ??」
窓際に立っていたアメリアは移動してベッドの上に寝転がっていた。
「……令嬢なのですから、そのようなことは……って今更言ってもダメですね。それでなぜベッドの上に??」
「今から寝るんだよ。夜動くだろ」
「強制的昼夜逆転ですか」
「そうだ。だから、おやすみ」
うちは靴を脱いですぐに布団の中に潜り込んだ。
絶対に指輪を見つけてやる!!
誰にも見つからず!!
そう意気込んでアメリアは目を閉じた。
★★★★★★★★★★
そして、夜。
夕方に目を覚ましたうちはティナが用意してくれていたケープを着てしっかりとフードを被った。
うちは自室の窓を開け、後ろにいるティナに振り向く。
ティナはもしかするとルイが今日1日寝込んでいたうちを心配してやってくるかもしれないので“ルイ払い“として部屋の前にいてもらうことにした。
うちは1人で池に行くことになる。
「アメリア様、くれぐれもお姿を見られないように」
「ああ。行ってくる」
「あと、寒くなったらすぐにお戻りください」
「はいはい」
うちは適当に返事をすると窓枠を越えて外に出た。
★★★★★★★★★★
池に行くとやはり人の姿はなく、しんと静かで草木が揺れる音だけが聞こえていた。
よしっ!!
今日は指輪を持って帰って明日からいつも通りに過ごすぞっ!!
読書はいいが、研究室に行けないのはつらいからな。
アメリアは持ってきていた網を片手に持ち、八つ橋の上で靴下と靴を脱いで水の中に足をつける。
池は凍っておらず、水の中の方が温かった。
自分の足が凍傷することはなさそうだな。
うちは昨日金の鯉を探していた場所に行き、次は落としてしまった指輪を探す。
水は透明で綺麗だが、暗いためあまり見えない。
ライトを照らすも、光が当たる範囲が狭いため結構時間がかかりそうに思えた。
それでも、見つけないと……。
アメリアは腰を曲げ、目を見開いて水の中を探す。
一時して、学園側からやってくる足音が聞こえた。
アメリアはそっと振り向く。
八つ橋の上にいるのは1人。
良く見えないので、うちはその人に向かってライトを照らす。
すると、そいつはうちに向かって叫んだ。
「そこにいるのは誰だっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます