No.102 再会の王女

「エリカ……??」




女王は隣に立つエリカの名前を呼ぶとベッドから出ようとした。




「あ、まだだめですよ」




エリカはベッドから落ちそうになった女王に駆け寄る。

うちもエリカに付いて行き女王のベッドわきに立った。

目を覚ました女王はうちらが部屋に訪れるなり「エリカなのね……」としきりに呟いていた。

そんな女王に対しエリカは首を傾げる。

女王が少し落ち着くとエリカはあることを尋ねた。




「女王様、なぜ私の名前を……??」




エリカはどこか不思議な様子で女王に聞いた。

さっきとは打って変わって落ち着いていた女王はうちらからそらしていた目をエリカの方に向けた。






































「あなたはね、私の子なの」


「えっ??」「へっ??」




エリカが女王の子??

へ??


女王の発言にうちと同様困惑するエリカは「まさか」と小さく言う。




「そんなわけないですよ。だいたい、私は人間ですし、ずっと地上で過ごして参りました。両親だっています」




エリカは必死に「人違いですよ」と訴えていた。


うちの頭に残っている前世での記憶にはゲーム開始時より前のエリカの様子はあまりない。

エリカの言う通り彼女は地上で人間界で過ごしていた。

両親もいた。一緒に過ごしていた。

















でも、

エリカの両親が実親とはっきり述べたところはなかった。

何よりもプレイ中に見たエリカの両親はエリカと似ている所は少なかった。


一方、女王とエリカの容姿は非常に似ている。

2人とも金髪に紫の瞳で瓜二つだった。

異なる点は若いか若くないかだけだ。




「人違いじゃないわ……」




女王はベッドわきに立つエリカの頬を手で撫でる。




「その紫の瞳。金色の髪。昔の私にそっくりだわ」


「おい、女王。エリカは人間なんだろ?? もしエリカがあんたの娘って言うのならあんたは人間じゃないのか??」




うちがそう聞くと、女王はゆっくり横に首を振る。

そして、女王は少し微笑んだ。




「いいえ。私は確かに妖精。人間ではないわ。でも、エリカは私の子だわ。「エリカ」という名は私がつけたの」


「え??」




女王はエリカの目を真っすぐに見つめる。




「あなたは私と人間の父から生まれたの」


「今、地上にいる父ですか??」


「いいえ……。今はもういないと思うわ」


「もう??」




疑問に思ったうちがそう聞き返すと、女王は少し顔を下げる。

その顔はどこか儚げさ、寂しさ、そして、懐かしさを感じた。




「彼はこの世にいないわ。ここの前国王、私の父に殺されたの。人間だったから捕まってね」


「……。なら、なぜ私は生きているのですか??」


「それはトランスファーマリンを使ってあなたを地上に送ったの。どうしても生きてほしくて。私としてはあなたと一緒にいたかったけれど、マティアがこの妖精界に置いていると殺されてしまうと言われて仕方なく赤子だったあなたと別れたの」




女王が震える声で答えるとエリカは黙ってしまった。

うちも一時黙っていたけれど、女王がエリカの実母なのは確信があったのでエリカに向かって言った。




「うちはお前と女王は似ていると思うぞ。今見比べると姉妹ってぐらい似てる」


「そうですか……??」


「あと、お前妖精たちと普通に会話できていただろ??」


「あっ」




うちが指摘すると思い出したのか口をぱかーんと開ける。




「……確かに、妖精のクウォーターであるルース様とクリスタ様は話せるのに人間の私も話せていましたもんね……」


「そうだろ。お前の実母はこの女王なんだよ」


「……あの夢の女性の声は……」




そこからエリカは黙っていたが、その間、エリカは何かに納得していたようだった。

少しするとエリカはベッドに近寄った。

そして、エリカは飛びかかるように勢いよくベッドの上の女王にハグをする。




「ただいま」




エリカはそっと言う。

まるで家にやっと帰れたかのように。




★★★★★★★★★★




「お前、本当にいいのか??」


「ええ。大丈夫です。母とはあれから十分お話ししましたので」




うちら8人は学園に戻るためドラゴンに乗っていた。

雲消え、天気は良く、空気も澄んでいた。

うちはその澄んだ空気を吸って、深呼吸をする。


目覚めた女王と会ってエリカが妖精の王女と分かってから、本当なのか王城内で検査をするとエリカには確かに女王と同じ血が半分流れていた。もう半分は人間だった。

王城内のみならず妖精の島全体が突然現れた王女に大混乱。

エリカは廊下を歩く度に話しかけられていた。

うちはその様子を見てエリカはここに残らざる負えないなと思っていた。

だけど、ドラゴンに乗って帰り途中のうちの隣にエリカはいる。

エリカ曰く、女王と過ごしたいが、今の学園にも通いたい。そこで、学園を卒業後妖精の島に戻ってくると女王に提案したらしい。

答えはOK。

しかし、女王が寂しそうにしていたらしいので、週に1回はビデオ通話をしようということになったそうだ。


黄金の髪がなびくエリカの顔は何かを解決したようにスッキリした表情を浮かべていた。

アメリアはそんなエリカに少し微笑む。

そして、後ろに振り向き遠ざかる妖精の島を見て、また行こうと心の中で決めた。




★★★★★★★★★★




いつも私の母は優しかった。

暖かかった。

でも、どこか違和感を感じていた。

母はそんな様子は一切なかったが、私はそういう気持ちが生まれていた。


女王様の様子を確認するため眠っている女王様と会った時、どこか安心感をあった。

疲労が溜まっていたのか疲れ切った顔をしていたが、顔はいつも鏡で見る私にどこか似ていた

なせか母に抱いていた違和感もなかった。


それ以降、どういうことだろう??と自分の心の中で疑問がぐるぐると回っていたのだけれど、でもそれはすぐに解決していった。




「あなたはね、私の子なの」




女王にそう言われ最初は困惑したし、「まさか。そんなわけないわ」と思っていた。

でも、アメリア様に自分が妖精の言葉を話せることを言われて、もしかしたら、と思うようになった。


誘導っぽいところがあるけれど。


でも、自分と似ているところ、女王様に対して母親に感じていた違和感がないところ、そして、夢で聞こえた女の人の声を思い返すと、自分の実母が女王なんだと確信に変わっていた。

その瞬間、胸の中にあったモヤモヤが消えていった。


そのおかげで帰り道はとてもスッキリしていた。

気分はとても良かった。

スッキリした私がアメリア様の隣で微笑んでいると、アメリア様が後ろに浮かぶ妖精の島ノルナゲスト島を見つめていることに気づいた。


アメリア様、また行きたいのかしら。

ウフフ。

それなら次は2人で行きましょうね。


私は心の中でアメリア様に呼びかけると、正面を向いた。




★★★★★★★★★★




ベッドで休む女王のところに金色の髪の美しい女性が訪れていた。




「女王様、行かしてよかったのですか??」


「聞かなくても分かっているでしょう?? マティア??」




女王がそう言うと訪れていたマティアはフフフと上品に笑い、「そうですね」と答える。




「アメリアさんを見張るためにエリカさんを行かしたのでしょう?? でも、別にアメリアさんと交流を持っていればなんともないじゃありませんか」


「そうだけれど、エリカもあちらで過ごしたいと言うからいいかなと思いまして。あなたが言った通り彼女がバリア主魔法の保持者なら直接見張っている方がいいでしょう??」


「まぁ、確かに」




マティアはうんうんと頷く。




「アメリアさんが世界戦争の火種になる可能性だってありますからね」




マティアはそっとそう呟いた。

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