No.84 それは突然に

「まぁ、うちが悪かったとはいえ別にベッドから落とすのはなかっただろ……」




うちはルースにベッドから落とされたときの痛みを思い出しつつも、朝食を食べていた。


ルースが起きるまで様子を見ていたアメリアうちだが、見ているうちに自分も眠たくなってしまい、いつの間にかルースとともにベッドの上で眠っていた。

ってことをベッドから落とされて気づいた。




「アメリアが僕の許可もなく寝ているからこんなことになったんだよ。普通、令嬢が男のベッドで無神経に寝ないだろ、ったく」




隣で目玉焼きを食べるルースはベッドから落とした理由とともに反論してきた。

正面にはすでに朝食を食べ終え紅茶を優雅に飲むマティア。

マティアはこちらを温かな目で見てくる。


マティアはなんでそんなに笑ってるんだ??

そもそもマティアがルースのところにいてとか言うからうちが眠ってしまうこんなことになってしまったんだぞ。

ったく。


ベッドから落とされた理由に納得がいかず、うちは朝食を何もしゃべらず口の中に入れていく。


とにかく、うちは家に帰ってバッドを最高のものにして他の研究もしたいんだ。

こんな街に出れば絶対襲われるところにずっと居座るつもりはない。

確かに、妖精の島を探検できるのは凄く嬉しいけど、反人間派の島で探検する必要はない。

無駄な力を消費するだけだ。


うちはご飯を食べ終えると食器を流し台まで運び、扉を開け外に出る。


でも、ここなら妖精も来ないわけだし、少しだけなら探検してもいいよな。


天気は最高の晴れで、扉を開けて目の前に広がる庭は昨日見たがとても美しいと感じた。

緑の中に赤、青、黄色、ピンク、紫、水色などの様々な花が咲き誇りまるで天国にいるかのような幸せな気持ちになった。


なんだか……。

久しぶりに女の子になれた気がする……。


すぅーっと一呼吸すると、振り返り椅子に座るマティアの方を向く。




「マティア。少し出かけてくる」




うちはそう言うと、マティアはニコッと笑い「街にはいかないようにね」と声を掛けられた。

「ああ」と答えるとうちはその小さな花畑を走り森へと向かった。




少しだけ……。




そう思いながら。




★★★★★★★★★★




「マティアさん。アメリアを行かしてよかったんですか??」




ルースはゆっくり冷めた朝食を食べながら柔らかな瞳で開きっぱなしの扉を見つめるマティアに聞いた。

マティアの白髪は窓から差し込んでくる日光によってキラキラと透明感のある絹のように輝いていた。

とても男とは思えない女性の美しさを感じられた。




「うん。いいの。彼女には行ってもらわなきゃ」




優しく微笑むマティアはそう答えるだけだった。




★★★★★★★★★★




「ここはどこだ……??」




うち、アメリアはマティアの小屋を出て森を適当に走っていると、少し暗い森を抜け太陽の光を感じる明るい場所に出ていた。

そこにはさっきマティアの庭で見かけた花たちが一面に広がり奥には島の端の証、崖があった。

晴れているおかげか海もよく見える。


なんか……。

暴れたいな……。


うちは左手の小指にはめた指輪を取る。

すると、魔法が解除され、白い髪が桜色の長い髪に変化していた。

桜色の髪は風でなびき頬に少し触れる。


たまにはいいよな……。

うちのことを知っている人がいる訳じゃないし。


そのまま花畑でバク転やクルクルとバレリーナのごとく踊って、花畑の中で寝転ぶ。

目の前には雲一つない青い空。

風も吹き、草木の音が子守唄のように聞こえ、目を閉じそうになる。


気持ちいいな……。

















パンっ!!!!!
























「!?!?」




銃声っ!?




うちは上体を起こし、銃声が鳴った方向に顔を向ける。

その方向は自分が来た道の先から聞こえた。


うちはマティアの家から歩いてここまで来た。

まさか……。




嫌な予感がしたうちは瞬時に花畑を駆け出し、マティアの家の方へ全力で走りだした。

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