No.80 グッジョブ、アメリア・ホワード

「なんで、僕が奴隷にされかけたことを知ってるの……?? アメリアに教えたことないよね……??」




ルースがそう言った瞬間、アメリアは「やらかした……」と心の中で呟きながら、止まりそうな頭を何とか回転させる。


しくった……。

こんなところで言うなんて。

でも、コイツにばらすわけにはいかない。

目に見えている……面倒なことになることぐらい。

何か……いい言い訳はないか……??


うちは頭をフルに動かし、考えに考えた。

それで出た答えが……。




「アメリア王女からこっそり教えてもらってたんだよ。ほら、うちはアメリアと仲が良かったからな」




王女もうちだけどな。


うちは苦し紛れの言い訳をする。

心の中のうちは跪いて両手を組み、祈る。


どうかルースこれで騙されてくれっ!!


うちのことを訝し気に見ていたルースは納得したような顔をしていた。




「あっ、そっか。アメリアってトッカータ王国出身なんだっけ??」


「あ、そうそう!!」




気づかれてたまるもんかという気持ちで笑う。




「あーね。あの王女様なら庶民の人とも平気でつながろうとするもんね……。それで知り合いなんだ」


「そうそう!! アッハッハッハ」


「王女様?? アメリア??」




正面に座るマティアは首を傾げる。


そういや、マティアを置いて話していたな。




「うちとは別にアメリアって名前の王女がいるんだ。そいつの話」


「なるほどね。あなたとは別の人ね」


「そうだ。誤解しないでくれ」




マティアはニコリと笑い、「分かった」と言った。

その後、サガ島のことや妖精についてマティアから教えてもらっていると、窓の外の空はオレンジ色になっていた。

気になることを全部聞いていたらあっという間に時間が経ってしまっていた。

話がひと段落すると、マティアは席を立ち、




「あなたたち、お腹が空いたでしょう?? ちょっと待っていて。昨日作ったシチューがあるから」




といい、キッチンに行った。

確かに今日はかなり動いていたので、お腹の減りが早くなっていた。

数分、うちは席を立ち部屋の中をうろちょろしていたのだが、ルースに「じっとしてください。視界がうるさいです」なんてことを言われたので仕方なく席について静かにしていた。

しばらくすると、深い器に入ったシチューとパンを持ってきた。

うちは前世のシチューを思い出す。


ご飯にシチューをかけたいな……。

でも、このパンもうまそうだな……。


マティアはアメリア、ルースの前にシチューの入ったと皿の上のパンを置く。




「お待たせしてごめんなさい。どうぞ召し上がれ」


「ありがとう」「ありがとうございます」




うちとルースはマティアに感謝し、温かいシチューを食べる。

マティアも自分の分を持ってきて食べ始めた。

数分後、あまりにもお腹が空いたうちはいつの間にか食べ終わっていた。


相変わらずしゃべらず食べるのは早いわ。


男子のルースも抜き一番に食べ終わっていた。

このくらいは……と思い、うちはお皿をかたずけ、机のダイニングの方に戻っていくと、マティアにお風呂も沸かしてあるからどうぞと言われたので遠慮なく入ることにした。


だって、疲れてんだよ。

色々ありすぎて。


アメリアは着替えがないことを忘れたまま、お風呂に向かった。




★★★★★★★★★★




「ルース君はぶっちゃけ、アメリアさんのことが好きなの??」


「ブー―――」




シチューを食べ終え水を飲んでいた僕はマティアさんのいきなりの質問に吹いてしまう。

マティアさんは笑いつつ机を拭き、僕もマティアさんのせいで吹いてしまった水を拭く。


ホント汚いことをするな……僕。

まぁ、マティアさんのせいなんだけどね。


机を拭き終え台拭きをキッチンに戻してきたマティアさんは席に着き肘をつく。




「それで、アメリアさんのことはどう思ってるの??」


「どうって何も……」


「ほんと??」


「本当です」




僕がはっきりそう答えると、マティアは溜息をつきガックリ。


一体、何なんだ。




「てっきり、予知と違って2人でここに訪れてきたもんだからもしかしてルース君がアメリアさんと2人きりなるために連れてきたのかと……」


「誰があんな怪物とこんなところにくるもんですか。てか、予知……??」


「そう。私の予知ではあなた1人がここに訪れてくるはずだったの。一瞬しか見えなかったんだけど、確かにあなた1人だったわ。でも、2人できた。こんなことって1度しかなかったのに。でも、1度あったの」


「1度??」


「そう、1度だけあったのよ。それは多分愛の力によって未来が変わったのだろうって私は思っていたから、今回もそうだろうって考えていたのよ」


「愛の力!?」


「まぁ、ルース君そんなに顔を赤らめちゃって」




僕はそう言われると、バっと顔を腕で隠す。




「赤らめてなんかいませんっ」


「照れないでいいのよ。でも、本当にアメリアさんを愛しているわけではないわよね??」


「愛してるってっ!? そんなわけないです!! それを言うならアメリア王女さ……」


「王女様を愛してるのぉ??」


「ああっ!!もうっ!!」




僕はマティアに誘導され遂に言ってしまった。


誰にも言うつもりはなかったのに。


アメリア王女を思い出すと自分の体がだんだん熱くなる。
































「ええ、そうです……僕はアメリア王女のことがす……」


「マティアァーーー!!! 服がないんだけど、代わりの服なぁーーい!?!?」




僕がぼそっと言うとアメリアの大声がお風呂場から響く。


……。




「あるよー!! ちょっと待ってて!!」




マティアは風呂場にいるアメリアに向かってそう叫びながら、席を立つ。

マティアの姿が見えなくなると、僕は力が抜け机に顔を伏せた。




グッジョブ、アメリア・ホワード。




僕は怪物アメリアを頭の中でほめたたえてあげた。

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