No.79 あ。
「未来が見える……??」
「ええ、そうよ」
おかま妖精、マティアは楽しそうに答える。
この妖精、予知が可能ってことか……??
おい、おい、おい!!
ゲーム内にそんなやついなかったぞ……!?
うちは衝撃の発言に戸惑いを隠せずにはいられなかった。
まさか、前世にアップデートが来たから……。
すると、マティアは家の方に腕を伸ばし、うちらに向かって微笑む。
「まぁ、とりあえず家の中に入ってお話ししましょう」
そんなマティアの誘いにアメリアはコクリと首を縦に振った。
★★★★★★★★★★
アメリア、ルースはマティアのログハウスに入るとマティアに「ダイニングテーブルの所の椅子で座っていて」と言われたため、素直に座っていた。
家の雰囲気はとても暖かみのあるものだった。
まだ、秋なので使われてはいないが、綺麗な暖炉。
木材でできた本棚や棚、机。
そして、その上に置かれたり、壁につるされたりしている薬草。
彼女もなにか勉強しているのだろうか……??
アメリアが部屋をキョロキョロしているとどこかに行っていたマティアは両手に湯気が出ているティーカップを持っていた。
マティアはアメリアとルースの前にそのティーカップを置く。
うちがその中を覗くと、そこにはミルクティー。
美味しそうだっ!!
喉が渇いたときミルクティーはあまり飲みたくないのだが、うちは何でもいいから飲みたかったのでミルクティーをごくごくと飲む。
その時、隣に座っていたルースに「うわ、上品さのかけらもないことするね」と言われたけれど。
気にしない!! 気にしない!!
自由に生きるのが一番だもんな!!
ルースが一口飲むと、マティアは正面に座った。
「それで……、なぜマティアは未来なんて見えるんだ?? お前、妖精だろ?? なんで人間のうちらを助けたんだ?? そして、ここはどこだ?? なんでうちらは妖精に追われたんだ??」
「アメリア、そんないっぺんにマティアさんは答えれないよ」
うちは単刀直入に大量のことを聞くと、ルースに注意を食らった。
早く知りたかったんだよ……。
うちが心の中でぶつくさ言っていると、マティアは快く話してくれた。
「未来が見えるのは生まれつき。見えるものは断片的で自分が見ようと思っても見れない。勝手に未来が見える。あなたたちを助けたのは当然のことだから。私は人間は嫌いじゃないし、反人間派じゃない。そして、ここはサガ島。反人間派の島だから人間のあなたたちは追いかけられたの」
ご親切なことにマティアは一息で答えてくれた。
「なるほどな……って、ここ、反人間派の島?? そりゃあ、どういうことだ??」
うちが首を傾げると、マティアは手のひらをルースに向ける。
「それだったら、彼も知ってるわ」
「え?? ルースが??」
「僕も妖精の歴史に関しては叩きこまれたからね……なんせ妖精と関わる仕事をしているもんだから」
「なるほどな。で??」
そこからルースがうちに分かりやすいよう妖精の歴史を教えてくれた。
昔、人間と妖精が戦争をしていたこと。
戦争が終わって一時が経つと妖精の中で人間とよく交流するようになったものがいたこと。
それを気に食わない妖精がいたこと。
そして、親人間派と反人間派で内戦が起きて分裂したこと。
ルースはそのことをざっくり簡潔に話してくれた。
「そうなのか……それでな……」
アメリアはバンっと机を叩き、立つ。
「てか、お前!! 妖精の王族なのかっ!?」
うちはルースに向かって大声を出す。
うちは話を聞いている中で一番それに驚いていた。
「そうだよ……。大声出しすぎ静かにしてよ」
ということは、祖父が妖精の国王でないとは言え、ルースは王族の血を持っている。
それなのに人間界では色んな人に追われ、奴隷にもされかけた。
「お前、『僕は妖精の王族です』ってなんで言わなかったんだよ」
「誰がいいふらすの。言ってもいいことないよ」
「でも、言ってたら人間界で襲われることもなかったかもしれない、奴隷にされかけることもなかったかもしれないんだぞ??」
椅子に座りながらうちがそういうとルースは黙っていた。
何黙ってんだか……。
とうちがルースの方に向くと、ルースは見開いた目をこちらに向けていた。
「なんで、僕が奴隷にされかけたことを知ってるの……?? アメリアに教えたことないよね……??」
あ。
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