No.75 妖精のクウォーターいるんだから
「僕、きっとここに来たことはない」
「へぇー。お前でも来たことないのか……??」
「うん。なんせ妖精の島はあまりにも多すぎて回り切れてないんだよ。まぁ、この前に行った島あるでしょ??」
「ああ」
「あの島にいれば大体物は集まってくるし、みんなが拠点にしている場所だから他の場所に行く必要もないんだよ」
「なるほどな」
うちとルースは崖の下を覗いた後、その付近で座って話していた。
なぜ、うちらはこんなところにいるのか。
それは妖精に関してうちよりきっと詳しいであろうルースにも分からず、お手上げ状態だったためとりあえずここに座り込んでいた。
「で、これからどうするの??」
「どうするも何も帰るに決まってんだろ、
「だろうと思ったよ」
ルースは呆れたのか肩をすくめ溜息をつく。
そんな呆れなくても。
だってさっ!!
ここ、ルースも未踏の地だぞ??
巷では妖精の島には地上にはない珍しいものがあると言われているじゃないか??
その妖精の島でまだ行ったことない場所には珍しいものがあるに決まってんだろっ!?
駆けまわるしかねぇーじゃねえか!!
とうちがルースに説明するとさらにさらに深い溜息をつかれた。
なんでだよ。
お前だって気になるだろ??
この島のこと、
なぜ、こんなところに転送されたのかをさ。
うちが必死に訴えていると、向かいに座っていたルースは立ち上がった。
「どこにいくんだよ??」
「帰る方法を探さないと帰れないだろ??」
うちも立ち上がり、引き返そうとするルースの手首を掴む。
お前はバカか。
うちにはバリアがあること忘れとんか??
……。
まぁ、うちも途中までここを飛び降りたらいいと考えていたけれど。
「うちのバリアで下に降りてったらいいじゃないか??」
「え、あそこまで歩くの??」
「そうに決まってんだろ」
ほんと、坊ちゃまは困りますなぁ。
ルースを引き留めたうちはそう思いつつ、崖からバリアを作り、大陸まで階段を作ろうと伸ばしていく。
パリッン!!!!
「え??」
うちが心を込めて作っていたガラス状バリアは途中までは伸びていたが、ある場所で何かにぶつかったのか割れた。
バリアの先はまるでビール瓶を割ったようにギザギザになっていた。
バカな。
うちはもう一度、状態を変え、ゼリー状バリアを作り下にある大陸へと伸ばしていく。
しかし、結果は同じで見えない何かにぶつかり消えてゆく。
「どうなってんだ……??」
「きっと、妖精のことだから防御魔法でも張っているんでしょ」
「妖精防御魔法を使ってるのか……」
妖精防御魔法。
この魔法は古代魔法の部類に入るのだが、人間には使えず、妖精のみが使用可能。
書物でちらりと読んだだけだが、大昔、妖精と人間が争っていた時代に妖精がこの島を守るために作ったものと言われている。
何人かのものは妖精じゃないのにも関わらず、使ったが全て失敗。
妖精言語でしかも複雑であったためできなかったと書いてあった。
「なるほどな……古代魔法凄いな……奥が深い」
「さ、あっちに行こう。もしかしたら、妖精がいるかもしれない」
「ああ、そうだな」
うちは仕方なく来た道を戻り、石碑の正面と反対側に向かって森の中を歩き出す。
妖精のクウォーターのルースがいる。
妖精に会ったらすぐに帰れるだろう。
その時のアメリアは大丈夫と安堵し進んでいたのだった。
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