No.73 最下層のお宝は青い光を放つ

「ここまで来たのはいいんだけどさ……なんで魔窟にしたのさ」




後ろから付いてくるルースはぶつくさとうちに言ってくる。


うち、フレイ、エリカ、ルイ、ハオラン、ルース、クリスタ、そして、テウタは魔窟の入り口が見える位置まで来ていた。

今回、うちが目標としていた魔窟はこの前ナイルたちに襲われた所の近くにあり、なんだかんだすぐ来れたのだが……。




「いいものが眠ってるらしいんだよ。お前、そんなに怖いのなら来なくて良かったのに」


「ちょっと怖いけど、僕にも商売があるんだよ。なぁ、テウタ」


「そーだねぇ。まぁ、私は基本物を動かすとか、闇業界の奴らを懲らしめる仕事の方が多いからなんとも言えないけれど」




隣を歩くテウタは呑気に答えた。


そういや、お前。

あっさり、学園に来たのはいいが、本業の方はいいのか??


とうちがじっと見ているとテウタは察したのか答えてくれた。




「あ、仕事はロウに任せてあって大事なこととかは私がやってるから大丈夫だよーん」


「そうか」




などと話しているとうちは魔窟の入り口に立っていた。


ここには多くの珍しい物お宝があるらしい。

多くの本に書かれていたから本当なのだろう。

しかし、今は魔窟の近くに人はいない。


なぜか。


この魔窟は地下に何層もあるらしく、下に降りる度魔物が強くなるらしいのだ。

そのためか、訪れた多くの人は3、4層で引き返した。

そのうちに3、4層をあらかた漁ったためかこのように現在は誰も来なくなったらしい。


全く、チキンなやつばっかだな。


因みにこの最下層にはあるものを守っているめちゃ強い怪物がいるとか??

楽しみだな。


うちが入り口で突っ立っているとフレイが話しかけてきた。




「ねぇ。大丈夫??」


「ああ」




いつになく柔らかな声で言うフレイはアメリアの顔を覗き込んでいた。

それに対し、うちはぶっきらぼうに返事をする。



うん。

そう。

最近な、

妙にな、

フレイがな、

異常に優しいんだよ。




……。




怖いんだよ。

ほんと、『あんた、誰??』レベルで。

ああ、分かってる。

今は目の前に集中だよなっ!!

そうだよなっ!!


うちは頬を両手で叩く。




「よしっ!!いくぞっ!!」




アメリアは持ってきたほぼ完成しているバットを構え、魔窟に入った。





★★★★★★★★★★




「なぁ、ここ何層目だ??あ、おりゃ」


「うーん。50層目ぐらいじゃない??ていっ」


「あ、じゃあ、もうすぐ最下層じゃないか。おりゃ」


「何層目が最下層なの??ていっ」


「本によると53層目だったと思う。おりゃ」


「ほんとだ、あとちょっとだ。ていっ」




アメリアとテウタは一番前で敵をガンガン倒し、とんでもないペースで進んでいた。

ちなみに他の人はというと……。




「さすが、アメリア様!!」

「怖っ。本当に怪物じゃないか」

「お兄様、アメリア様に対してそれは失礼ですよ」

「……あの2人無敵だね」

「……」




と背後で好き好きにしゃべりつつ、物を回収していた。

見た目はまるでボランティア活動のゴミ拾い。


お前ら、暇そうだな。

いいけど。


うちが敵を倒しつつ、後ろを確認すると、さっきから気持ち悪いぐらい黙っているフレイがこちらを見ていた。

うちと目が合うとにっこり笑う。


……。

いや、

本当にどうした??


うちはなんとも反応せず、前を向き自分に向かってくる敵を倒していく。




30分後。

若干無意識に魔物を倒していると、最下層にいつの間にかついていた。


最下層ということは……。




「ガアァアウゥゥ―――――!!!!」




いますよね。


うちが立つ数メートル先には今までの雑魚とは異なり強そうな巨大魔物がいた。

体は黒く、堅そうな鱗が付いており、見た目はドラゴン。


うん、きっとドラゴン。

でも、たとえめちゃ強いドラゴンだとしてもうちは倒せるっ!!


うちはどこからか知らないが自信がみなぎっていた。

隣を見ると、2本の剣を構えるテウタ。




「テウタっ!!行くぞっ!!」


「あいよっ!!」




うちは右から、テウタは左からドラゴンに近づき、バッド、剣を振る。




「ガアァアウゥゥアアァーーーーー!!!」




攻撃が当たり、ドラゴンは耳が痛くなるぐらい鳴く。

すると、ドラゴンは前に倒れていく。


え?


アメリアがもう1撃当てようかと思っていると、ドラゴンは気絶してしまった。


マジ??

気絶??

ドラゴンよっわ。


アメリアはドラゴンの弱さに呆れていたが、背後で待っていたメインキャラたちに声をかけた。




「おーい。ドラゴンが眠っているうちに後ろにある物取っとこうぜー」




うちがそう叫ぶと、メインキャラたちは「アメリア嬢とテウタ、マジ怖っ」や「……本当に敵なしの怪物だね」などと言いながら(主にルースとハオラン)ドラゴンが守っていた奥のところまでやってきた。




「うわぁーーーー!!!」

「きれーい!!」




エリカとクリスタは奥にあったものを目にすると、黄色い声で叫んでいた。


その気持ちも分からなくない。

だって、目の前に巨大な光る青い宝石があるのだから。


ドラゴンの後ろには巨大な宝石があり、アメリアたちの顔を青く照らしていた。

その宝石を見るなり、他の人とは次元の異なるレベルで興奮していた人物がいる。




「すごいっ……すっごいっ!!!!」




その声は将来、世界各地を回る商売人になるであろうルースであった。

振り返るとルースは青い宝石に触ろうと走ってこっちに向かっていた。


うんうん。

まずは触ってみなきゃな。


後ろにいたルースを見ていたうちは宝石に目を戻す。




「お兄様っ!!足元!!」


「わっ!!」



クリスタの声が聞こえた瞬間、一番宝石の近くにいたうちは振り返るとつまずいたらしいルースがこちらに倒れてきそうになっていた。




「おいっ!!大丈夫かっ!!」




倒れつつもルースを受け止めたうちは宝石にもたれていた。


宝石に触れていた。




「いってぇ……」


「アメリアっ!?!?」


「ん?なんだ??テウタ??あ?お前、なんか白いぞっ??」




テウタがこっちに向かって走ってくる。




「私が白いんじゃないのっ!!」




へ??



























「アメリアが青く光ってんのっ!!!」


「え??」




うちは周囲を見渡すと周りが白く、また、受け止めたルース、自分の体が青白い光を放っていた。




「なんじゃこりゃ??」




素っ頓狂な声を出すと、うちの視界は真っ白くなっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る