No.72 天空でお買い物

「えっ!?知らなったの?!」


「え、ええ……」




天井にいたゾフィーは飛んで下に降りてきた。


ゾフィーはうちの正体を知らない。

それは分かっていたことだったし、学園内で自分が王女であるのが分かりそうなことをそう話すことはなかった。

もちろん、先日、ニトと話していた時も気を付けて他の人を追っ払った場所で話していた。

幸い、その時ゾフィーはいなかったが。


でも、突然のテウタに油断した。

しくった……。




降りてきたゾフィーは跪き、うちに頭を下げる。




「アメリア王女様、今までのご無礼失礼しました。私は……」


「やめろ、ゾフィー。顔を上げろ」


「へ??」




うちは席を立って歩き、ゾフィーの目の前で止まった。


うちの顔を見上げるゾフィーはなんだか不安……怯えているように見えた。


……。




「あのな、確かにうちはトッカータ王国あっちの王女だが、かしこまったもんは好まないんだよ……。だから、そういう風な態度はやめてくれないか」




ほんとしんどいからな、こっちは。




「え?」


「あと、このことは黙っとけよ」




別にゾフィーコイツはメインキャラじゃない。

他の人に言うなどすれば、コイツをどうにかしないといけないが、うちが「言うな」とはっきり言っておけば、多分コイツは他に漏らすことはないだろう。




「まぁ、ゾフィーも座れよ」




うちはそう判断し、ゾフィーを誘う。




「い、いいんですか??」


「ああ。テウタにせっかく会えたんだし、話ぐらいしていくのは悪くないだろ」


「え?その子まさかゾフィー・ハントリー!?」


「ああ、そうだが??どうしたんだ、テウタ」




座ったゾフィーを見てテウタはうちに向かって『マジ??』とでも言いたげなおまぬけな顔をしていた。




「いや、私が会った時はとっても品のある令嬢様だったから……世界は分かんないなと思って」


「テウタ。コイツ、ドMなんだぜ」


「アメリア様、言わないでくださいませ」


「今更なんだよ、あんなに『刺激くださいませぇ~』って大声で言ってたくせに」


「え、ゾフィーそんなこと言ってたの??ヤバ。引くわ~」


「あ、あれは冗談でやったんですわっ!!そうですわっ!!」




アメリアは大笑い。

テウタも堪えれず、クックッと笑う。

ゾフィーは頬を赤く染めながらも必死に反論していた。

そうして、アメリアは満足するまでゾフィーいじりをやって昼休みを終えた。





★★★★★★★★★★




数日後の休日。




「ここが妖精たちの島ですか……」


「うん。アメリア嬢とエリカさんは初めてだっけ??」


「あ、ああ」

「ええ、そうですね」




見事にウソをつくうちは空に浮かぶ島から下にある国を見つめる。

今日は天気も良く、雲が少ないため地上が見えていた。


久しぶりだ……。


うちはメインキャラ、フレイ、ルイ、エリカ、ハオラン、クルス兄妹、テウタと天空に浮かぶ妖精の島に来ていた。

妖精たちが住む島は多くあり、発見されているものだけでも5000は超えると言われている。

妖精のハーフであるルースが言うには、島々の1つ1つ大きさ、形、地上からの標高も異っており、住んでいる妖精たちの文化も違っていたらしい。

うちはその妖精の島の中でも人間と最も仲が良く、交流が多い島に来ていた。

その島は前世で言うハブ空港のような役割を果たしており、各地から様々な物が集められ、また、輸出されていた。


うちはアメリア王女として、以前ルースとともに来たことがあった。

その時はただの様子見だったが、今回は違う。

今日はバットの材料を買いに来た。

確かに前世通りに作るもよいと思っていたが、やっぱりここにしかないものを使いたいと考え、それをつぶやいたら、ルースにこの場所に来ないかと誘われドラゴンに乗って来ていた。

因みにドラゴンを操っていたのはルースと友達の妖精。


ああ!!妖精さん凄いっ!!


島の端に来ていたアメリアたちは移動し、街に入る。

そこには多くの人が行きかい、まるで海外のフリーマーケットの通りのようだった。

売っている物の種類も豊富で珍しいものがあるその場所は天国に見える。


素晴らしいっ!!妖精の島っ!!


心の中で舞い踊るうちは完全にテンションが上がっていた。

他の人たちの様子を見たが、楽しんでいるようだった。



「△Д〇■Й。◇§¶Σ??」


「ん??」



商品が気になってうちが店の前で商品の石を見ていると、妖精のおっさんが話しかけてきた。


なんて言ってんだ??

日本語でもなく、英語でもない言葉。

あー、分かんねえよ。




「アメリア様、そのおじ様、その石を買うのか尋ねられていますよ」




近くにいたエリカがそう言った。




「ああ、そうか。いや、それは買わないや、悪いな」




うちがそう言うとエリカは訳しおっさんに話す。


エリカがいたらいけるな……よしっ!!




「エリカ、行くぞ」


「はい!!アメリア様とならどこまでも!!」




うちはエリカとともに通りにある全ての物を目にし、感動して、買って移動。そして、また感動して……。


と繰り返し、数時間後。




一緒に回ってくれていたエリカが買い物中、アメリアは両手にたくさんの紙袋を持ち通りの真ん中で突っ立っていた。




……。

……。

面白いもんはあったんですよ。

……。

……。

面白いもんは買ったんですよ。

……。

……。

でもね……。




「ないのっ!!バットに使えそうなものがないんだよっ!!!」


「あ、姉さんだ」




うちが叫ぶと、義弟ルイがやってきた。

ルイの後ろにもメインキャラたちがぞろぞろ。




アイツらもなんか買っているな。




ルイを見ると何か買ったのか片手に紙袋。

すると、ルイはうちが持っていた紙袋をさっと取る。




「姉さん、持つよ」




ああ、さすが弟。

でもね、そんなに重くないんだ、それ。




と思いつつも、うちはルイに紙袋を渡す。




「ルイ、帰るぞ」


「あ、はい」


「え?帰るの??」




荷物が少なそうなルースはキョトンとしていた。




「ああ、十分買い物したからな」


「使えそうなものはあった??」


「いや、なかった。だから……」


「だから……??」




ああ、だからな……。

明日も休みだからな……。





























「明日、魔窟に行こうと思うんだ」


「へ?」

「ん?」

「アメリア様??」

「アメリア、何言ってるの??」

「姉さん??」

「……また、ぶっ飛んだことを」

「へぇー。魔窟ね、面白そう」




クルス兄妹、『へん?』ってお前ら何言ってんだ。

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