No.68 お前はストーカーか

「お前、なぜ俺が『カンデラ』と分かった??」


「いや……その」




アメリアは口を濁す。


ニト王子に植物園に連れてこられたアメリアはテーブルを挟んで向かいあって座っていたのだが……。



いや、前世でゲームしていて知っていましたなんて言えない。

絶対言えない。


それにしても、なんかニト、スキンシップ多くないか??


机に置いている自分の手を見ると、ニトががっしり両手で掴んでいる。

少し動かそうとしても、びくともしない。


これはどういうことだ??

まさか、あの『アメリアにぞっこん』設定のせいでこうなっているのか……??




「まさか、あの船での記憶を覚えているのか……??」


「ああ!!そうよ!!覚えているのっ!!」




うちは勢いよく答える。


何も思いつかなかったんだよ。

うんって言うしかないじゃないか。




「ふーん、そう」




彼はそうつぶやくとニコリと笑う。


コイツ、何か企んでるな……。




「俺はお前の正体を知っている。アメリア・C・トッカータ」


「ああ、そのことも知ってるよ。確か、あんたとあの丘で会ったんだっけ??」


「へ??」




うちがそういうとニトは素っ頓狂な顔をする。


悪いね。

こっちは前世があるから覚えてんだよ。




「あの時、あんたはカンデラとして、うちは王女としてだったな」


「……」



うちがまだ王女として過ごしていた時のある日、いつも通り王城を抜け出しサンディとともに1本の木があるお気に入りの丘で過ごしていた。

すると、フードを被った少年がその木の上におり、気になったうちは声をかけた。

フードで隠されていたがちらりと見えたシアン色の髪。

うちが「きれいな青だな」というと少年はこちらを向く。

そして、降りてきた。

彼は「どうも」というだけ。

うちは無口そうな彼をモブだと判断し、話し始めた。

王城の愚痴、フレイのこと、姉さんたちのこと……。

そして、彼もお兄さんのこと、今の仕事のことなど話していた。

一緒に過ごしたのは3日間だけだったけれど楽しかった。

そして、彼がここを離れる日に彼の名を聞いた。


「俺の名はカンデラ、またな」


そういうと彼はあの丘を去っていった。


すっかり前世のことなんぞ忘れて話しかけてしまったあの頃。

ゲームとそっくりなのになぜ思い出さなかったんだろうか??

カンデラの正体を覚えていたらあんたと会うことはなかったのにな。




ゲームのまま行くと、カンデラはそのままアメリア王女の生活をずっと追っていて、王女がホワード家に引っ越す様子も見ていたはず。

それでアメリア・ホワードがアメリア王女であることを知っているのだ。


おい、ニト。

お前はストーカーか。


まぁ、それだけあの3日間が楽しかったんだろうな。




「でも、なんでここにあんたがいるの??」


「それはあんたを取り戻しに来るため」


「へ??」




ニトは顔を近距離まで近づけてくる。































「フレイ王子との婚約を消して俺と婚約しないか??」





おい、何言ってんだ??

ニト、シナリオ間違えたやつを持ってきたか??




アメリアは完全に静止していた。

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