No.60 恵莉香が好きなアサシン

「アプデー??」





研究室にはいつも通りの2人。

それも当然今日は休日であり他の研究員はいない。

姪っ子の恵莉香はいつものソファでゴロゴロかと思いきや、椅子にきちんと座り自分のノートパソコンの画面を覗き込んでいた。

うちはというと研究データの処理を行ったり、他大学の研究員からのメールを読み返信をしたりしていた。

姪っ子はうちに「そーそー」と言い答える。





「前にプレイしてもらったゲームあるでしょ?」


「あの乙ゲーか」


「うん、それをね私パソコン版でもやっていたんだけど、アップデートされてね」





うちは頷きつつ、マウスをカチカチとクリックしメールを開いていく。

すると、さっきまで自分のノートパソコンの前にいたはずの姪っ子恵莉香がうち、恵美莉の隣に立っていた。





「なんとなんとっ!!!」


「なんだよ、テレビショッピングやってるどこぞの社長みたいな言い方して」





うちが白けた目で恵莉香を見ていたが、姪っ子は気にすることなく「あー、はいはい」と受け流し話を続ける。





「それでねっ!!新キャラが登場したわけですよっ!!」


「へぇー。あんなにキャラがいるのにか?」


「フレイ、ルイ、ルーク、ハオラン、ナイル……。確かにあのキャラたちは豪華だったけれど、また、さらにイケメンが現れたわけよっ!!」





恵莉香は腰に手をあて指を立て、ニコニコ笑顔で話す。

そんな様子を見てうちは……。





「ニヤニヤして変態みたいだな……」


「うるさい。仕方ないでしょ、私のタイプにドンピシャな子が来たんだもん」


「もんって」





うちが腕を組んで聞いていると、恵莉香は先ほどまでいたデスクまで戻り何かを持って帰ってくる。

恵莉香が持っていたものは何かを印刷したプリントであり、恵美莉の目の前に持ってきて見せてきた。

そこには豪勢とは言えないまぁ一般的な服を着ていたシアン髪の少年が描かれていた。

彼の姿はまるでアサシン。





「お前、こんなのが好きなわけ?」





うちはプリントされた少年をつんつんと指でつつく。





「カッコイイでしょ?コイツが新キャラなわけよ」





恵莉香はつんつん突く恵美莉からプリントを素早く離し、「でっ、」と話を続ける。





「敵だった子が学園に通ってくれるんだよ!!彼のルートではっ!!どうよっ!ねっ!」


「ふーん。まぁ、やってみようかね」


「じゃあ、パソコン版でやってよ。そっちの方が映像きれいだから」


「おー。分かった、仕事これを終えたらな」





と言い、パソコンの画面に向き直すと、肩をトントンと軽く叩かれた。





「えーと」


「まだなにかあるのか?」


「その青髪の少年ルートなんだけどまたあの悪役令嬢が出てくるのよ。あーホントあの女嫌い。しかも、幼い頃に2人会っているらしくて……」


「それがなんだよ。あの性格ブサイクは主人公エミリには負けるだろ」


「前の5人ならそうなんだけど、でも、今回は結構難しいの」


「ほぉ、珍しいな。前のは乙ゲー初心者向けバリにかなり簡単だったのに」


「うん、まあね。なんせその青髪少年は最初から……」


「最初から……??」




































「悪役令嬢アメリアに惚れているのよ」






あ、思い出した。


白い空間にいるアメリアは目を開け、前世の記憶を思い出す。

そして、彼が何者なのかも思い出した。

彼も攻略対象者。

そして、うちの死神。





ああ。

だから、カンデラに会った頃から心のどこかで嫌な予感がしていたんだ。

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