No.61 狂ったラスボス
彼女は椅子から立ち上がり青髪の少年を突き飛ばす。
少年は壁に背中を思いっ切りぶつけ、非常に痛そうにしていた。
彼女の姿はまるで……ラスボス。
アメリアの方へ駆け出していたフレイは足を止める。
気を完全に失って自ら椅子から立ち上がろうとしなかったアメリアは立ち、すぐそばにいた少年を手で殴っていた。
「アハハっ!!アハハっ!!」
そして、狂ったように笑っていた。
光魔法を放ちドアを開けたエリカはというと衝撃すぎたのか、静止して口をあんぐり開いていた。
「ア、アメリア様……??」
「アハハっ!!」
うん、会話になってない。
エリカに話しかけられたアメリアの様子からはいつものアメリアじゃないことぐらい分かった。
記憶が消去されたのか……。
フレイは唾を飲み込むと、自分の血の気が引いていくことが分かった。
記憶を失った彼女はどうなるのだろう?
別人に変わってしまうのか?
僕らのこと、そして、友人であるアメリア王女のことを忘れてしまうのか?
「アッ、アハハっ!!」
「あ」
気づけば、アメリアは不気味な笑い声をあげ、部屋の外に出ていく。
ちょ、ちょっと。
そんな変な調子で外には……。
僕は心配になり廊下へと出たが、そこには次々に追ってきた敵を倒すアメリアがいた。
容赦なく殴りを相手に与えK.O.にしていく。
「アハハっ!!たのしっ!!」
力はそのままだが、中身は別人。
アメリアは敵よりも危ない人になっていた。
しまいには「敵はいねーがぁ!!」と笑いながら言う始末。
放置する方が怖い怖い。
フレイはずんずんと進むアメリアに後ろから付いて行った。
★★★★★★★★★★
「あなたですか、アメリア様をあんな風にしたのは」
激おこぷんぷん丸のエリカは彼の首にナイフを向けていた。
彼、カンデラはアメリアに食らった攻撃で壁にもたれ座り込んでいた。
痛みは引いているのか、凛とした表情で目の前で立つエリカを見上げていた。
「バーカ。ちげーよ」
カンデラがそう答えるとエリカはナイフに力が入ったのか「カチャ」と音鳴らす。
しかし、カンデラはそれにおびえる様子もない。
「何が違うというんですか。あなたがやっていたのことは明白でしょ?」
激おこぷんぷん丸無表情エリカは冷たい声で言った。
それに対し、カンデラははぁと溜息をつき、呆れ顔を見せる。
「あんたらが途中で邪魔するからああなったんじゃないか。まだ、途中だったんだぜ?」
「途中?そんなわけ……っ!!」
エリカが動揺したその瞬間、カンデラはエリカの手に瞬時に触れ、エリカの動きを制御した。
落ちていくナイフを素早く手に取り、エリカの頭上を乗り越え、カンデラは部屋のドアへと向かう。
カンデラは部屋に出る前に立ち止まりエリカの方へ向く。
「油断は禁物だぜ、ナイルファンの光の魔女さん。じゃあな」
「待ってくださ、あっ!!」
スローで動くエリカは逃げるカンデラを話で止めようとしたが、それは叶わずカンデラは走り去っていった。
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