No.22 うわあぁぁぁぁあぁぁーーーー!!!スタートだあぁぁぁぁぁーーーー!!!

「エリカ……??」


彼女の顔を見た瞬間、不意にその名が出た。


「えっ。私を知っているのですか??」


そのエリカの声をどこかで聞いたことがあった。

あの夢……前世のことを思い出す。


「研究者が乙ゲーする様子初めて見たわ」

「別に研究者がプレイしてもいいじゃねーか」

「はいはい。あっ、ちなみにこのゲームの主人公の名前はねー」





「あ、エリカだ」


姪っ子、恵莉香は頬を膨らます。


「私が言おうと思っていたのに!! まぁ、だから、私は恵莉香ってちゃんとボイスが入っているのー!!いいでしょ??」

「エミリっと。よし」


うちはスイスイと名前を変更し、決定ボタンを押した。


「あああ!!!」


そうだ……あのゲームの主人公は。


「エリカ・ストレチア……」

「よく私をご存じですね……というか、大丈夫ですか?? 顔色が優れないですよ」


美少女主人公、エリカはうちに触れようとする。


「うわあぁぁぁぁあぁぁーーー!!!」


彼女はうちの叫びに思わずビクっと驚く。

主人公っ!?

えっ!?

主人公!?

目の前にいるのはあの乙ゲーの主人公!?

頭の中は大混乱。

あーうー!! と叫ぶしかない。

そんな狂人じみたうちの様子にエリカはなおさら心配そうにこちらを見ていた。


「どうした?? そこの人」


背後からまたもや聞き覚えのある声。

振り返るとやはり知っている彼がいた。


「ハオラン・ターナーっ!?」

「?? 僕のこと知ってるの??」


うちは頭を抱えたまま下に俯く。

ハオラン・ターナー。

コイツもあの乙ゲーのキャラで攻略対象者。

イケメンの無口的キャラだったはず。

バンドマンのようにくいっと顔を上げると、ハオランと目が合う。


「うわあぁぁぁぁあぁぁーーーー!!!」


まるでハオランが怪物かのように叫んだ。


「え?? 僕何かしたっけ?」

「どうしたんだーー!!」

「どうしたんですかーー??」


うちの叫びに気づいたのか、2人の男女がやってくる。

よく見ると、元仕事仲間ルースとクリスタだった。

ハッ!!

顔を見たことあると思っていたけど、ルースも対象者だから……。


「うわあぁぁぁぁあぁぁーーーー!!!」


3回目の叫び。

うちはかの有名な絵画『ムンクの叫び』のように顔に手をあて叫んでいた。


「どうかしたのですか?? エリカ??」

「いえ、私は何も……ただこの方が……」


うちが背を向けていたエリカの隣にいつの間にかいた彼と目が合う。

金髪に、水色の目を持つ男の子。

そして、いかにも王子って感じの服。

なぜか冷や汗が出ていた。


「フレイ・ウィンフィールド……」

「ええ、そうですよ」


なぜ何年も気づかなかったのだろう。

フレイも攻略対象者だ。

しかも、プレイヤーの中では人気とされるキャラクター。

しかも、すでにエリカと仲良さげ。

彼らが登場するゲームの名前も思い出す。

ああ、そうだ。

ここは本当に『恋する研究者~王子たちとの恋実験~』という名前が甘々な乙女ゲームの中だ。


そして、うちはアメリア・ホワード。


どのエンドも怒り狂って死ぬか、不気味に笑って死ぬしかないこの乙女ゲームの悪役令嬢。

しかも、フレイとエリカの感じからゲームはすでに始まっている。


「うわあぁぁぁぁあぁぁーーーー!!!」


衝撃の事実に気づいた瞬間、うちは叫んで気絶してしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る