No.15 K・E・B・Y・O・U

フレイはティナから愛おしいアメリアの状態について詳しく説明を受けていた。


「アメリア様は先ほどまで危篤状態にありまして、現在は安定しておりますが……」

「だったら、なおさら僕に会わせてくれいないか??」


フレイは昨日まで元気でピンピンしていたアメリアがそんな状態になっていることにを信じることができなかった。


「それも……ちょっと……」

「なぜだっ!?」


急に声を荒げるフレイにティナはビクっとする。


「それは……医師の忠告であり、陛下のご命令だからです。今回、アメリア様がなられたやまいは感染の恐れがあり、私どもも最低限のことでしか出入りできません」

「君たちが入ることができるのなら、僕も入室できるのではないか??」


ティナは困惑した顔で話す。


「私たちは使用人です。アメリア様の身の回りのことは私たちがする必要がございます。そのため、できるだけ感染する可能性が下がるよう保護防具をして入室するよう指示されています。また、フレイ様やその他の王族、貴族の皆様には入室させないよう陛下からご命令されています」

「ああ、そうだ」


フレイの後ろからよく聞く男の人の声が聞こえた。

フレイが振り向くとアメリアの父ジェフリー国王が歩いてきていた。

フレイとティナは一礼をする。


「確かに、君がアメリアに会いたいのは分かる。しかし、君は一国の王子だ。君も分かるだろう?」

「それは分かっていますが……」


フレイは神妙な顔をしていた。


「だから、僕は君とアメリアの婚約をなかったことにしてほしいんだ」

「えっ!?」


フレイにはあまりに衝撃だったか、真顔で、目も開ききっていた。


「フレイ君??」

「……」


国王はフレイの反応がないため、フレイの顔の前で手を振った。


「おーい、フレイくーん」

「陛下、僕の意識はあります」

「おお、そうか。よかった」


フレイはそう言っているが、全く微動だにしなかった。


「ともかく、アメリアはいつ……いつ死ぬか分からない。君とアメリアが結婚できる可能性が低いんだ。だから、僕としては君に新たな伴侶になる方を見つけてもらいたい」

「……僕の世間体を悪くしないようにするために、僕から婚約破棄をしてほしいということですか」


フレイは今にも泣きだしそうな顔をしていた。

まぁ、当然人前で泣くことはないのだが。


「ああ」

「……アメリアはそのことについてなんと……??」

「君が幸せになってくれるのなら婚約をなかったことにしてほしい、と言っていた」


国王もティナも悲し気な顔をしていた。

3人の沈黙が一時続いた後、フレイが口を開いた。


「陛下、1日だけお時間いただけますか……??」

「ああ、1日だけだよ。アメリアにどのくらい時間があるか分からないからね」

「ええ、承知しています。では、僕はお先に失礼します」


そういうと、フレイは王子らしくなくトボトボと歩いて去っていった。




★★★★★★★★




トントン。

国王はフレイの姿が見えなくなると、目の前の部屋の扉を叩いた。


「アメリア、扉の前にいるのだろう?? 出ておいで」


国王が話しかけてきたのでうちは素直に出ることにした。


「ゲっ!!」


部屋の外に出るとめったにみないであろう光景が広がっていた。


「フレイ様……あんなにアメリア様のことお思いになって……」


「フレイ君が本当にかわいそうだよ……アメリア。もう、やめない?? やめない??」


国王おやじとティナは2人そろってぼろぼろと涙を流していた。

おい、国王おやじがこの提案したじゃねーか。

何泣いてんだよ。

それにティナ。

お前、ノリノリで演技していたじゃねーか。

見ていなくても声で分かんだよ。


「てか、国王おやじ。あれなんだよ。一日だけ待つって」


数字もセリフも全然違うけど、なぜか『3分間待ってやる』でお馴染みのム〇カ大佐を思い出しちまったじゃねーか。

懐かしいな。


「いいじゃないか、1日だけならいいかなって……」

「破棄しないって言ってきたらどうするつもりだよ」

「どうしようね??」


国王おやじは笑ってごまかす。

もう、ダメダメじゃねぇか。

はぁーとため息をつく。

仕方ない、こうするしかないか。

めんどくさいけど。


「じゃあ、うち、病人なんで寝るね。おやすみ」

「えっ、まだ、お昼前だ……」


バタンっ


「ひどいねぇ、ティナ。反抗期かな」

「うーん。そうかもしれませんね」


そんな外から聞こえる会話を無視して、しっかりと自室のドアを閉め、机に向かった。

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