No.3 デブ救世主
1人で戦った兄はあの口論でコテンパンに負け、6人の姉たちの計画がガンガンと進められっていった。
そして、1週間後。
うちはまあデブなため、限界値まで身を整え……。
お茶会に出席している。
全然楽しくないだろうと覚悟はしていたが、意外にもここには様々な種類のお菓子が用意されていた。
前世は元ヤンで研究者だったが、やっぱり中身は女子の所も当然あって、うちはお菓子が大好き。
今はデブだから似合ってるって?? うるさいww
まぁ、そういうことだから、目の前にお高級なお菓子があるのに食べないわけにはいかないでしょ??
夢中になってバクバクとお菓子を口に放り込んでいると、人が集まっている場所が目に入った。
よく見ると、その集団の中心に、金髪の美少年がいた。
その美少年くんはどこかのご令嬢たちに囲まれている。
そういや、前世の学生時代ではダチから借りていた漫画にこんなやつがいたよなあ。
なつい~。
うちはヤンキーだったでもやっぱり中身は女子だった
(ホントにヤンキーかって疑ってるかもしれないけど、強かったんだぜ、うち)
少女漫画よく読んでいたし、イケメンは目の保養であるのには変わらなかった。
まぁ、でもガキに対しては恋愛感情は生まれないがな。
それにしても、姉ちゃんたちが言ってた非難とか嫌味とか全然ないな!!
安心!!
安心!!
警戒心をゆるゆるしてハムスターのごとく綺麗に盛り付けられたお菓子を平らげていると、集団の中心にいる美少年くんが距離が近いご令嬢たちに押し負け苦しそうにしていた。
あの美少年死ぬっ!!
アメリアはドスンッドスンッと音を鳴らしながら集団に向かって走り出す。床が地震のごとく揺れ、アメリアはその揺れの震源地となっていた。
「あなた止まりなさいって……アメリア王女様っ!?」
集団の外側で美少年を見ていたご令嬢がこちらに注意してきた。
いやいや、こんなデブ、めったにいないから
そう思いつつ美少年の所へ走り、パシッと手を取ってそのまま引きずって別の部屋に向かった。
美少年は何が何やらもう分からない様子であったが、うちにちゃんと付いて来ている。
部屋に誰も入ってこないよう、侍女たちに見張りをさせた。
そして、うちは一呼吸おいて自分が座っているソファのテーブルを挟んで向かい側にあるソファに座る彼に声をかけようとする。
「おい、ガ……」
「ガキ」と言おうとしたが、考え直し途中で止めた。
この口調のまんまだと姉たちの許可が下りないかもしれない。
ただえさえ、
チェックするための刺客かもな。
クソっ……油断はダメだな。
うちはコホンと咳払いをし、言い直す。
「突然のご無礼、申し訳ございません。」
「いえ、僕こそ、助けていただきありがとうございます。僕はフレイ・ウィンフィールドと申します。」
「ウィンフィールド…。ウィンフィールド王国の第3王子か。」
ボソッとつぶやく。
ウィンフィールド王国はうちのトッカータ王国の隣国であり、うちの国王、パパと
まぁ、国王同士仲がいいとはいえ、姉たちはさすがに王子を刺客にするはずがないだろう。しかし、油断は許されない。
「私は第7王女アメリア・C・トッカータと申します。」
「ええ、あなたのことは知っていますよ。」
そうだよな……。
こんなデブ王女は覚えやすいよな。
「アメリア様は6歳にしてお姉様方と一緒に国のためにファッションや化粧品について考えていらっしゃるとお聞きしました。」
はぁ?? それどこの情報だろう?? 1週間前(前世があることに気づいたあの日)からあまりにも姉ちゃんたちの化粧がケバいからアドバイスしてみたんだが、この世界にはツイッターやインスタが存在するのか??
「よくご存じですね」
うちは目的のため、前世ではほぼしなかったであろう作り笑いをして見せる。
「ええ、アメリア様のお父様、トッカータ国王陛下と私の父、ウィンフィールド国王陛下が昔から親しい仲なので、よくアメリア様のことをお聞きしますよ」
バカ
宣伝しろよ、もう。
心中で父親のことを「クソっ」とか言いながら怒りつつも、現実では精一杯微笑む。
ハハハ。
「ま゛、まぁ、お恥ずかしい。お姉様方のように服を自分の手で作ることはできませんが、自分で服などのデザインをしております。」
ウソ。
ウソウソウソウソ。
服のデザインを描いているとか、すべて前世のパクリに決まってんだろがよ。
うち、スカートなんてありえないし。
スカートだとしても、スケバン、ヤンキーファッションがいいし。
細かく言うと60年代のがいいし!!
という自分の願望で6歳ということを忘れて描いてしまった…。
そういや、うちは一応6歳の少女?? なのか…。
そりゃ、はたから見たらうちの画力はすごいわな。
前世のファッションに恋い焦がれていると、フレイが暗い表情をして言った。
「その…、僕の国ウィンフィールド国では魔法や自然、その他の研究に力を入れているのですが、兄様たちは活躍されていて、でも、凡人の僕は全く力になれなくて…、他国の方と交流し自国の力になれるようにしたかったのですが、ご令嬢の方々に囲まれ僕はどうしたらよいか分からず…」
フレイは今にも泣きそうだった。
いや、さっきの状況、自国の力になるチャンスだったのに。そのきれいな顔であの令嬢を全部落としたらら、君の国大きいし、大体の国言うこと聞くんじゃない??
そんな悪い考えを口にするのを抑え、アメリアは気になったことを聞いた。
「失礼ですが、お兄様がたはおいくつでいらっしゃいますか?」
「第1王子から順に、12、11、10です。3人います。」
「……」
ツッコミをしたくてたまらなくて思わず叫びそうになったが、そこは抑え(大人だしね)、心の中で叫んだ。
はぁ?!
12~10歳で活躍するってどういうこと?!
あんたの兄ちゃん、天才なの??
バカなの??
いや、アホなの?!
20でも若い方なのに(
取り組んでいるだけじゃなくて、活躍?!
絶対、兄ちゃんたち天才じゃねーか。
脳内で叫んだうちはとりあえず興奮を抑え、深呼吸をした。
「フレイ様、きっとお兄様方は天才でいらっしゃるのです。失礼ながら、もしフレイ様が凡人でいらっしゃるのなら、するべきことは1つしかありません!!」
「何をすればよいのですか?」
フレイは立ち上がったうちの顔を見上げる。
「努力です。私はこの見た目通り凡人です。周りにすごい方や素晴らしい才能がある方ばかりで、私はその中で生きていかなければなりませんでした。その時、私が行ったのは努力です。勉強して、様々なこと経験して、頑張りました」
大学院に入って、めっちゃ凄いやつと出会って。
うちは負けず嫌いだったから、必死になって頑張ってた
「だから、時間をかければ、努力をすれば、天才お兄様方と同じ位置…いや、それ以上になれると思います」
全て言い切ってフレイの方を見直すと彼の表情はとても輝いていた。
「努力……ですね!! 確かに僕は凡人……それ以下です。アメリア様はご自分のことを凡人とおっしゃっていましたが、全然違いますよ。あなたは本物の努力家です!! 僕もアメリア様みたいに努力して、頑張ります!!」
「ええ。そうと決まれば、あの
「はい」
フレイは苦笑していたようだったが、気にも留めず扉を開いた。
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