No.2 姉ちゃんたちの勝手なる作戦会議
「それでは、トッカータ王家の姉弟会議を始めます。今回議長を努めます、ヒラリーです。よろしくお願いします」
「なんでヒラリーなのぉー?? 長女なんだから、私がー」
「アメリナ姉だと話が結構進まないというか、話がとんでもない方向にそれていく前例が多数あるんです。頼りないです」
「ブー」
「アメリナ姉様、はしたないですよ。私も今回はアメリアのことですので、ヒラリーに賛成です、ごめんなさい」
姉のなかでも天使なミーシャはアメリナに微笑む。
長女であるアメリナは「おけー、おけー、もう進めて」と諦めたのか、議長をヒラリー姉にたくし手のひらをひらひらと振る。
うち、アメリア・トッカータは姉ちゃんたち、兄貴でなぜか円卓会議を始めていた。
7歳にもかかわらず、言葉で姉を圧倒するヒラリー姉。
一見、幼稚なアメリナ姉。
この2人は、3歳差。
まったくどっちが姉やら。
まぁ、状況確認の前に、とりあえず、うちの家族構成から整理しておくか。
1番目の姉、第1王女 アメリナ・トッカータ。
10歳。
ぶっ飛んだSISTER BS初号機(シンジくんと同じやん)。
髪は長く、いつもハーフアップし後ろに1つにまとめている。目はとてもキリッとしており、カッコいいという言葉が似合う顔立ち。
そんな見た目に反し、喋り出したらアホ丸出し。
愛称はアナ。
2番目の姉、第2王女 メルン・トッカータ。
9歳。
髪はツインテールにしているが、どこからその髪がきているのか尋ねたくなるようなところーーツインテールの髪を結んでいる上にお団子を作っている。すごい毛量なんだろう。
性格はというと、上が珍獣なので、真逆の様子。
無口気味だが、頭も良く、まあまあしっかり者?少し天然なところもある。
しかし、暴走する初号機アメリアとは仲が良く、2人でよく買い物に行く。
3番目の姉、第3王女 ラニーニャ・トッカータ。
8歳。
BS2号機(アスカと同じやん、いいな)。
雰囲気は猫のようで、耳の上から三つ編みをし、ハーフアップにしている。
髪型がアメリアと似ているせいか、考え方が似ている。
愛称はラニャ。
そのラニャの暴走を止めるのが、トッカータ王国唯一の王子、ラニャの双子の弟、エドモンド。髪はショートヘア。
姉弟が女ばっかりだが、なんとか生きている。
そして、末っ子のアメリアを溺愛している。
そのため、姉達から「シスコン」と呼ばれる若干かわいそうな王子。だが、そんなことではヘコたれない変人王子。
でも、しっかり者。
愛称はエド。
4番目の姉、第4王女 ミーシャ・トッカータ。
7歳。
左横の髪を少し結って、あとの髪は自由にしているという上の姉と比べると簡単な髪型。
だが、姉達の中で1番女の子らしい、というか、王女らしい様子。
また、姉弟の中では、ヒラリーに次ぐ勉強人かつ常識人。
しかし、少しおっとりしているせいか、ドジなところもある。
そのミーシャの双子、第5王女 ヒラリー・トッカータ。
ポニーテールで長女アメリナよりキツい目の持ち主。
王子エドを抜き、冗談抜きで次期女王と言われるくらい(まだ…7歳だ、だよな??)
それでも、変人な姉達とはなんだかんだ仲が良い。
そして、6番目の姉、第6王女 カレミナ・トッカータ。
BS3号機(トウジくんと一緒やな。あ、アニメの方な)。
前髪は短めだが、まぁ、なんとも長い髪は後ろでまとめ紺の布で結ってリボンのようにしている。そのリボンもどきが耳みたいに見え、可愛い感じの女の子に仕上がっていた。
まぁ、これもBSの1人なんで、姉に似ますよね。
性格はアメリナと同様、外見とは全く違い、とにかくアグレッシブ。
ぶっ飛んだSISTER 通称BS は全員、城脱走経験者だが、カレミナは桁違いで、脱走回数が多いこと、多いこと。
明るく楽しい少女だが、大人にとっては手に焼く王女。
ちなみに、カレミナはアメリアと同い年だが、誕生日は異なっている。
だが、年が近いこともあって、双子のようにいつも一緒に遊んでいる。
エドを除くこの6人の姉たちには髪色以外で共通していることがある。
それは、ファッション、流行、かわいいものに目がないこと。
そして、小学生の年齢にしてスタイルが物凄くいいこと。
そんな姉たちに対し、うちはというと…
6歳にも拘らず、この大きなお腹。自分の足が見えない。
何より動くのが大変。
まぁ、つまり、うちの体型はすごいデブ。豚デブ。
そのおかげで、前世を思い出すまでファッションなんて興味なかった。お菓子には……ね、この体だし、まぁバリバリ興味があるけど。
そんなデブなうち、第7王女 アメリア・C・トッカータについて姉ちゃんたちが話しているらしい。
「はーい。議長、提案でぇーす。」
「はい、どうぞ。アナ姉様」
「アメリアはこれから大改革するべきです。」
ドーンと答えたあまりにも抽象的な提案に、ミーシャは疑問をぶつける。
「どういうことですか?? 抽象的すぎてよく分かりません、アナ姉様」
「ちゃんと私の話を最後まで聞いてって。名付けて『アメリア大改革!!』はアメリアのダイエットとマナー教育を徹底して取り組むというものよ!!」
なんかどこかで聞いたことのあるネーミングだな。
「まぁ、それは実行しようと思ったことですけど、その具体的な内容は?? 何するんですか??」
「……運動…だよね」
「ええ、そうですね、メルン姉様。そっちは、体力に自信があるかつまともじゃない人がやればいいですから、アナ姉様、ラニャ姉様、カレミナがお願いします」
「任せなさい!!」「体力には自信があるよぉ〜!!」「妹ためなら何でも!!」
アメリナ、ラニャ、カレミナの3人全員、さらっとヒラリーにディスられたことに気づかず、ヤル気に満ちている。
そんなおマヌケ3人の様子に、ヒラリーは思わずため息がついた。
いやいやイヤいやイヤいやいや、ちょい待て。
うちを置いていくな。
ダイエット??
冗談じゃねー。
そりゃ、このデブいこの体はイヤだが、正直、しんどいことしたくねぇし、つまんねぇし、何より他のことしたい。
研究者ーーそれが前世の仕事だった。
研究者というか、科学者??
両方一緒か??
まぁ、いいや。
話を戻して、高校卒業後、なんとか大学に入学。
その後は自分でも意外だったと今も思うが、大学院に入って、そのまま研究者へ。
姪っ子にこの話をしたら、『理系女やん』と言われたなぁ。
つまり、うちはいつの間にか研究のトリコになっていた。
前世研究オタクのうちが今世で研究やめるかって??
ないない。
それに、数日過ごしてこの世界に魔法があることに気づいたうちが研究をしないわけがない。
だから、ダイエットより研究をしたいんだが……。
「姉ちゃんたち……うち、そんなことしたくな……」
「「「「「「いや、するの(するんだ)」」」」」」
息ピッタリに姉6人が答えた。
「な、なぜっ……??」
姉の勢いに少し圧倒される。
「私たちは王家の人だし、この国はファッションを先取り、流行を発信する国よ。その国のトップがこのまんまじゃあ……この姿を見たとき国民が落胆するじゃない」
「あと、この国はまだ裏で仲が悪い国があるんだ。その国の王女や令嬢たちがアメリアに非難するかもしれないんだ。」
アメリナとヒラリーが心配そうな表情でこちらを見る。
まぁ、心配なのは分かるんだがな……。
名目上は王女のうちにわざわざケンカを売ってくるやつはいるのか??
それに、本人が
「姉ちゃん、うち、研究したいんだ。魔法の」
うちが自分のしたいことを主張すると、姉たちは訝しげな顔をする。
助けを求めようと唯一の王子を向くが……兄はずっとキラキラした目でうちを見つめていた。
論外だ……。
兄貴に助けを求めてもダメやん。
そんな時、優秀王女ヒラリーが口を切った。
「……アメリア、お前は王女。トップクラスの身分を持つ女性だ。そんな者が……アメリアには不快かもしれないが、太っていたら将来が危うい。それに婚約はアメリアの年齢を考えるともう出来る段階にある。だから……」
「でも、別に婚約することないんだよな。それに自分で稼げたら旦那はいらねぇし、問題はないんだよな??」
「旦那って……。いやいや、お前は王女!! 王女な・ん・だ!! そんな者が外で働くなど……」
「じゃあ!! 王女と研究者を両立するのは!! どうだ!! ねぇ!?」
「いいじゃーん。おもしろそー」
アメリナ姉はうちの意見に賛同し、拍手していた。
「アナ姉様!! 両立って簡単にできるもんではないですよ!!」
「でも、本人がいいって言ってんだからいいじゃないのぉー」
はい、BS2号機賛同。
「ヒラリー姉、ヒラリー姉以外はもしかしたらファッションデザイナーやモデルとかになってるかもしれないんだよ。だったら、アメリアが研究者になっても別に問題はないんじゃない??」
意外にも3号機カレミナ姉がまともな意見を出し、賛成してくれた。
「姉様やカレミナは国のためだからするのだろう。」
「アメリアも国のために研究するんだもんね」
「ああ」
「……私も研究で出た結果でファッションなどに生かせることができると思うので、両立することに関しては賛成ですが、もし、それを実行するとしても、王女としての装い、マナーを先に身につけるべきだと思いますが……」
常識人ミーシャは現実を踏まえた上で述べる。
さすがミーシャ姉。
「そうだな。それでは、来週城で開かれるお茶会でアメリアのマナーレベルを計ろう」
「「「いやー!! 待てー!!」」」「……待って」「いや、それは待って」
姉ちゃん5人はヒラリーの提案に対し、止めに入った。
「バカー!! ヒラリーのバカ!!」
「アナ姉様に言われるのはちょっと…」
「いや、バカなの!! 今のアメリアのまま、お茶会に放り出したらどうなるか分かる??」
「……」
ヒラリーはアメリナの質問に対し、真剣に考えたがすぐに答えは出ず、そのかわり……
「はい!! アナ姉!!」
「ほい、カレミナ!!」
「アメリアも恥かくし、王家も恥をかくかもしれない!! それに非難されるあまり、アメリアはひきこもる!! 以上!!」
「正解!!」
BS のアメリナ姉とカレミナ姉が話しているとコントみたいだなぁ。
ハイテンションだし。
じゃねぇ、じゃねぇ……。
話が逸れてる。
うちはそんなヤワじゃねぇー!! うちの前世なんだと思ってんだっ!!
(※ご注意ください。アメリナたちからの目線だとアメリアはただのデブの6歳児です。)
姉ちゃんたちがうちが弱いと思っていることにプンプン怒っていると……。
「アナ姉様、そうなるかもしれませんが……そうなることも踏まえて言ってのです。非難されるのは王家の者として威厳がなく、ナメられている証拠でしょう。そっちのレベルも分かるかと思いまして」
ヒラリーの意見を聞き、姉ちゃんたちは頷いた。
「なるほどねー。その理由ならまあ…アメリアには非難に耐えてもらうしかないわね」
「………そうですね」
「えっ……??」
「ガンバ!! アメリア!!」
「えっ?? ちょっ」
「お茶会は
「そうよ!! あのアナ姉とラニャ姉もできたんだもの。アメリアにもできるよ!!」
「「カレミナだけには言われたくないわっ!!」」
姉たちは(勝手に)意見をまとめたみたいで、うちにそれぞれ応援の言葉を言っていた。
いやいやいやいや、マナーもかもしれないが、体型が問題って言ってたじゃないか!!
1週間で豚デブの体をどうしろと!?
可愛い妹を危険(というかい非難)に晒したくないと言い張る兄エドと姉たちが新たに口論し、バチバチを繰り広げている中、うちはため息をついた。
姉ちゃんたち、ほんと強い。
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