幼き日の約束
勝利だギューちゃん
第1話
「私、大きくなったら、たかくんのお嫁さんになる」
小さい頃に、仲の良かった女の子に言われた。
純粋に好きだった。
かわいいとは思っていた。
でも、恋とは違っていた。
あの子もそうだろう・・・
「僕が全力で守るよ。一生・・・」
そう答えていた。
「約束だよ」
「うん」
幼稚園の頃は、男女関係なく遊んでいた。
しかし、小学校に入学すると同時に、
異性には、敵意を抱くようになる。
男子と女子が、分裂するのだ。
ただ、仲が悪いならまだいい。
「腐る」「汚い」
もはや、犯罪レベルだ。
しかし、思春期になると、また興味を持ち始める。
幼稚園の頃と違い、異性として意識するのだ。
「たかくん、ごめんね。私、彼氏出来たんだ。
かっこよくて、イケメンで、楽しいから・・・」
そう言って去っていく。
まあ、そうだろうな・・・
客観的に見て、俺は彼氏としては不合格だ。
思春期に入りたての頃は、中身よりも容姿に惹かれる。
それでいいし、そうあるべきだと思う。
ただ、あの子とは友達関係としては、続けていきたい。
「たかくん、私、振られちゃった」
俺の胸で泣きじゃくる。
何でも、他に好きな女の子が出来たそうで、「お前よりももずっとかわいい」と、
別れを告げられたそうだ。
俺は、頭を撫でて、「もっと素敵な人ができるさ」と、言うしかなかった。
今は辛いかもしれない。
でも、向こうは自分を愛してくれる人を、自ら捨てた。
君は、自分の事を何とも思っていない相手を失った。
気づいた時には、もう遅いのだ。
「たかくん、私新しい彼氏ができたよ。とても、スポーツ万能なんだよ。
絶対、プロ野球選手になれるよ」」
嬉しそうに報告してくる。
今度の相手は、野球部のエースだそうだ。
あの子は、マネージャーをしていて、アプローチをされ、恋に落ちたそうだ。
その彼は、甲子園には出られなかったが、将来性を評価され、プロ入りした。
「たかくん、私、彼と別れたから」
今度は、プロになれたので、CAか、女子アナと結婚したいのが、理由だそうだ・・・
その元彼を、ぶん殴ってやりたくなったが、その子に止めらた。
「たかくんには、関係ないから・・・」
その子は、俺の胸の中で泣いていた。
ただの便利屋かもしれない。
でも・・・
「たかくん、私、好きな人が出来たよ。今度は、続くといいな」
少し前に理想のタイプとしてあげられていた、3高だ。
確かに、この世の中では、その方が安心して子供を生めるな・・・
それが、女性にとっての、一番の幸せだろう・・・
どうやら、幼いころにした、
「一生を、全力で守るよ」という形は、果たせなかった。
「さようなら・・・俺が一度は愛した人よ・・・」
≪それだけなの?≫
「だれ?」
≪だから、それだけなの?≫
「だから、何?」
≪あなた、あの子の事好きなんでしょ?≫
「ああ」
≪なら、どうして力づくで奪わないの?ずるいよ≫
「俺では、あの子を幸せに出来ない」
≪それは違うわ≫
「なぜ?」
≪女の子は、自分の事を一番愛してくれる人と、一緒にいたいの≫
「フィクションではね」
≪今ならまだ間に合うわ≫
「どこへ?」
≪あなたが、愛している人のところへ≫
その日は雨が降っていた。
台風が近づいているせいか、土砂降りだった。
歩いていると、あの子を見かけた。
泣きながら、傘もささずに歩いている。
理由はわかった・・・
俺は駆け寄り、傘を差し出す。
「たかくん・・・」
「体まで、濡れることはないよ・・・」
「たかくん、私の事、怒ってるよね?」
「どうして?」
「わがままで、自分勝手で、たかくんを利用して・・・」
「ああ、怒ってる」
「・・・許して・・・くれないよね・・・」
「いや、ひとつだけ条件を飲んでくれるのなら、この雨と共に水に流す」
「何?」
彼女の肩を抱き寄せ答えた。
「死ぬまで、俺を支えてくれ」
「・・・うん・・・」
雨はやみ、空には福虹がかかっていた・・・
幼き日の約束 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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