蛍
椿童子
プロローグ
小澤(おざわ)直之(なおゆき)、私の名前です。45歳で営業の最前線で頑張っていると自負しております。
「あなた、少しは子供と遊んで下さいよ」
いつも妻には叱られますが、ここで一踏ん張りすれば、ひょっとすると役員になれるのではないかと秘かに期待しておりますので、昼も夜も、土日さえもお客様のためとあれば、どこへでも駆けつける、「男芸者」などと陰口さえ叩かれる男です。
しかし、当然、私にも苦手なことはあります。
「小澤さん、ホタルの夕べ、如何ですか?」
「いやあ、どうもホタルは苦手で」
「光の洪水ですよ。あれを見ながら一杯、こたえられませんよ」
「なんか、儚くて、ははは、ロマンチストなんですね、私は」
「おやおや、意外ですな」
別にロマンチストな訳ではありませんが、私はホタルを見ると、悲しくて涙が出て止まらなくなります。
これまで人にはお話ししたことはありませんが、あなたにはお話ししましょう。でも、内緒ですよ。
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