陽炎たちの花咲く丘

姫亜樹(きあき)

陽炎たちの花咲く丘

春には薄紅色の花霞はながすみの中に

夏には油蝉あぶらぜみの歌声の中に

秋には休みなく舞う落ち葉の中に

冬には音もなく降る雪の中に

幻を見せるといわれた

陽炎たちの花咲く丘


青い空と緑に囲まれ

子どもたちは蝶や虫を追いかけて

好奇心の赴くまま

丘を走り回る

大人たちは子供たちを

優しく見守り微笑む

丘は倖せな空気に満ちて

永久の時を生きるはずだった


陽炎たちの花咲く丘は

今はもう幻のように消え

コンクリートのビルが建ち

砂の舞うアスファルトの道路には

子どもたちの姿はなく

疲れた顔の大人たちが

せわしなく歩いていく


失った緑に季節は狂い

太陽に熱せられた都市に

陽炎たちが花開き

この国の未来を

やがて幻のように奪っていく

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