僕とメガネとカラフル少女! 〜フリマで買ったメガネはオーラの見える魔道具でしたぁ!?〜
道野クローバー
買い物って買う瞬間が1番楽しいよね!!
あの夏の日──僕は3万円と引き換えに、退屈な世界の色を見る権利を得た。
──
私立、
周りの同級生は「今日の部活だりー」だの「今度の文化祭楽しみー!」だの「ガチャでゼウスが出た!」だのそんな話で盛り上がっているが、僕はそんな話には全く興味が持てなかった。
なんだよガチャでゼウスって。僕の知ってる神はガチャポンからは出ねぇよ。
とかそんな事しか思えないからだ。……だから友達が少ないのだろう。
……そんな事よりフリマだ。僕は胸ポケットに入っているスマホを取り出して、近所で開催されるフリマ情報の乗っているサイトを開こうとする。
当然このサイトはお気に入り登録をしているため、圧倒的スピードで開くことができるのだ。
左上にある、買い物袋の絵をしたアプリをタップ。そして「近日開催されるフリーマーケット」をタップすると、近くのフリマ会場がズラーッと表示された。
僕はそれらを眺めて……今日、「桜片公園」でフリマが開催されることを知った。
桜片公園とは大きな噴水があるこの辺りで有名な公園だ。そして帰り道にあるので、学校の帰りでも簡単に向かう事ができる。……これは絶対に行かなくては!
とか考えていると。
「おい
と肩を叩きながら僕の名を呼ぶ男が一人。振り向かなくても誰だか分かる。
コイツの名は
幼馴染と言うと、すぐオタク君たちはツンデレで世話焼きのかわいい女の子を想像するだろうが、矢上は身長175センチの整った顔をした、スポーツ万能のイケメンの男だ。残念だったな!
「またフリマか?」
「ああ。今日は桜片公園で開催されるんだ」
「本当に相馬はフリマが好きだよなー。じゃあ良いやつあったら頼むぜ?」
「了解ぃー」
そして矢上は数少ない僕の理解者でもある。僕の性格、趣味をほぼ把握しており、時々フリマも一緒に行く程の仲だ。
だが最近はサッカー部が忙しくて、なかなか行けないらしい。だからこうやって、良いやつがあったら買ってきてくれと頼まれたりするのだ。
「にししっ、相馬の選ぶ物はセンスあるからなー。楽しみにしてるぜ?」
「ああ、任せろ」
矢上が喜ぶ物もあらかた把握している。イケてる洋服やアクセサリー。楽器やCDなどの音楽系の物が好きらしい。
簡単に言えば陽キャが好きそうな物買ってきたら大体喜ぶ。単純だな。
……ん? じゃあタピオカとか買ってきたら嬉ションするんじゃねぇかな……。
とかアホなこと考えてると。
「あ、でも今日文化祭の準備があるらしいから……今日は早く帰れないらしいぞ」
「……は?」
悪魔のようなワードが聞こえてきた。……僕は思わず聞き返す。
「な、何だって!?」
「いや、だから文化祭の準備があるって。ホームルームで話あったろ?」
いや、知らんわ……。ホームルームなんて、寝るかフリマの妄想するかの時間だぞ。
「嫌だ。嫌なんだけど!! 早退……早退しよぉ!!」
カバンを手に取り教室を出ようとするが、矢上に引き止められる。
「待て待て待て。そんなに行きたいのか相馬!」
「当然だ! 桜片公園で行われるのは2ヵ月ぶりなんだぞ!」
「そ、そうか……」
矢上は少し引いた様な顔をしたが、そんなことはどうだっていい。とにかく僕はフリマへと行きたいのだ。
すると矢上はうーんと少し考えた表情をした後、こう言った。
「……あー。じゃあオレから実行委員に伝えとくよ。『相馬はお見舞いに行くから手伝えない』って」
「本当か矢上!? めっちゃ助かるぞ!」
もちろん僕の知り合いに入院している人などはいないが、そんなことは知らんわ。やっぱり持つべきものは友だな!
「……まぁ構わないけどさ。さすがに明日は手伝えよ?」
「明日のことは明日考えるよ」
そして僕は矢上に感謝しつつ、ワクワクしながら午後の授業を受けたのだった。
──桜片公園──
既にフリマは始まっていた。テーブルの上いっぱいに並べられている商品、そしてごちゃごちゃするくらいの人だかり。
いつも見慣れているとはいえ、やはりここにやって来るとテンション上がるなぁー。テーマパークに来たみたいだぜぇー。
早速色んな店を見に行こう。
一つ一つの店を軽く見ていく。パッと見でも、その店がどんな物を中心に売り出しているかは分かるのだ。
例えば……ここは古着中心の店だね。見たところ女物だし、ここはスルーでいい。
ここは……フィギュア系か。僕はいわゆる世間ではオタクと呼ばれる人種なので、やはり気になってしまう。少し足を止めるが……再び歩き出した。
理由は値段だ。フィギュア系の物を売る人は相場をよく理解している。だから安いものは安く、高いものにはしっかりと高めの値段を設定する。お得な買い物は難しいのだ。
……まぁ終盤にまた覗きに来よう。……実は終盤で値段を下げたりする人もそこそこいるのだ。そしてそこを狙う人もいる。
まぁとりあえず次だ。次の店は小物系中心の店か──
「……んっ!?」
思わず声が出てしまった。いや、出るのも無理はない。なぜなら小物達に並んで──異色の商品が置かれてあったのだ。それは……
「ニャンテンドースニャッチの……スニャブラセットだとぉー!?」
皆さんご存知、大人気ゲームのスニャッチ。品薄状態が続いているこのゲーム機がこんな所でお目にかかれるとは……!!
しかもスニャブラセットだ……!!
(スニャブラとは……様々な種類の猫がぶっ飛ばし合う大人気のパーティゲームである。)
僕はテーブルの縁に貼られているPOPをガン見する。……値段3万円。お得だ。定価よりお得だ。
……へ、へへっ。これだからフリマはやめらんねぇよ……!!
僕はその商品を売っているおばちゃんに話しかけてみた。
「すみません、これってスニャッチですよね! 売っても良いんですか?」
するとおばちゃんは反応する。
「大丈夫なんですよー。実はこれ懸賞で当たったんですけどねー。でもウチはゲームしない家庭でして、必要なかったんですよー」
「あ、そうなんですか!」
なるほど。確かにゲームをしない人には置き物でしかないだろう。……だがっ! 僕はする人なのだ!!
僕は即決で買おうとする……いや、待て。ここでこの商品を買ったら財布がすっからかんになってしまうな。
今の手持ちは、頑張って貯めた小遣いの3万円と小銭が少し。小銭だけではもう買い物はできないだろう。さっき来たばかりなのにもう満喫できないのはさすがにもったいない。
だがっ! 迷っている間にも他の人がスニャッチを購入してしまうかもしれない!
ああ……どうしようか。
……脳をフル回転させながら考えること数秒……僕は1つの考えにたどり着いた。
フリマ会場をめっちゃ急いで1周して楽しんでから、ここに戻ってくることにしよう。
我ながらナイスアイデアだ。
僕はおばちゃんに「また来る」と言って、早歩きをしだした。
───
僕は急いでフリマ会場を歩き回る。時々気になるものがあったような気がしたが、スニャッチ以上の関心は得られる物はなかった。
というか最後の方はスニャッチの事しか考えていなかった。
……よし。充分満喫したな。
僕は急いでスニャッチの売っていた店へ戻ろうとした時……
「……ん?」
めちゃくちゃ怪しい店を発見した。
ボロボロのブルーシートの上に正座している老婆の姿。そして目の前には明らかに時間のズレた時計、ひび割れた水晶、レンズの薄いメガネ等の商品が雑に置かれている。
そしてその店の周りには誰もいない。みんなその店を避けている様に見えた。
だが……僕はそれに強い関心を得た。だってこんなに露骨に怪しいし……こんなの一周まわって信用出来るだろ。
僕はその店に近づいて話しかけてみることにした。
「あの……すみません、この店は何を売ってるんですか?」
すると老婆は薄気味悪い笑いを浮かべながら言う。
「ふふ……見れば分かるじゃろ。魔道具じゃ」
「え?」
……んんー?やっぱりやばい店だったのか?
……いや、ここまで来て引ける訳が無い。僕はもっと踏み込むことにした。
「魔道具って?」
「そのままの意味じゃよ。魔法の道具」
「……え、ええ?」
老婆は困惑している僕など気にせず、続けてこう言ったのだった。
「……少年よ。
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