共作
勝利だギューちゃん
第1話
クラスメイトの男の子が死んだ。
加害者は、クラスメイトの女子。
殺した理由は、「あの子のせいで、恋が破れたから」という、
意味不明なものだった。
人が人を殺す理由なんて、こういった身勝手な動機が多い。
人間とは、そういうものだ。
彼とは、あまり話をしたことはない。
でも、私が声をかえてくれたら、きちんと対応してくれた。
絵が、とっても上手だった。
私は、彼の絵がとても好きだった。
「私が、ファン第一号だからね」
「ありがと」
彼はとても、喜んでくれた。
彼の通夜や葬儀には、大勢の人が参列した。
もちろん、あの加害者女子はいなかった。
天罰が下る事を祈ろう。
四十九日が終わった後、私は彼の家を尋ねた。
彼の、お母さんが笑顔で出迎えてくれた。
「生前、秀行くんには、とても仲良くしていただきました」
「もしかして、赤井紅葉さん?」
「はい、そうです」
「息子が話してたわ。『仲のいい女の子がいる』って・・・」
「そうですか・・・」
照れくさいのと同時に嬉しかった。
「あのう、お門違いとは承知しておりますが・・・」
「何?」
「秀行くんの、部屋、見せていただいても、いいですか?」
お母さんは、笑顔で通してくれた。
彼の部屋は、整理整頓されていた。
亡くなった時の、まんまだという。
彼の几帳面さが、うかがえた。
いたるところに、彼の絵が飾ってあった。
机の上には、日記が置いてあった。
悪いとは思いつつ、見てしまった。
すると、そこには私宛の、手紙が書いてあった。
≪赤井紅葉さん
君がこれを読んでいるということは、おそらく僕は、この世にいないだろう。
君の事だから、おそらく来てくれていると思う。
それを信じて、したためる。
どういう形にせよ、僕の人生が終わったのは、それが運命だ。
受け入れる。
ただ、僕の描いたキャラ、子供たちが気になる。
だから、紅葉さん
君に、僕の子供たちを託す。
では
いずれ・・・≫
数年後、私はテレビに出ていた。
作品がヒットをしてアニメ映画化される事となり、
ゲストとして呼ばれた。
本来なら、オファーは断っているが、今回ばかりは、受けたかった。
《今回のゲストは、この作品の作者の、福野秀行先生です。
よろしくお願いします。》
《ありがとうございます》
《先生は女性なのに、どうして男性の名前を使っているんですか》
《このペンネームは、高校時代に仲の良かった男の子の名前なんです》
《男の子の・・・ですか?》
《その子は、若くして命を落してしまったんです》
《そうなんですか・・・》
《で、亡くなった時に、あの子たちを託されたんです》
《託されたといいますと?》
《「幸せにしてあげてくれと」だから、この作品は、私と彼との合作なのです》
《先生は、その方のために、漫画家になられたんですね》
《はい》
作品は大ヒットとなった。
彼の生み出したキャラは、今は幸せになっている。
私は彼の墓前で報告をした。
「秀行くん、君の子供たちは、元気だよ」
共作 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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