予習と復讐

三十六太郎

第1話 N君は浪人確実

N君の話をしよう。

N君とは中学時代はずっとクラスも同じで部活も同じであった。

他の仲間といっしょに放課後には買い食いをしたり、よく遊んだ。

受験勉強もよそに中三の夏休みにキャンプに出掛けたのはいい思い出だ。

N君は中学時代は勉強もできるタイプだった。


高校も同じ県立高校へ入学した。

県下では進学校であった。

高校入学後、N君とはクラスも部活も別々になった。

お互い充実した高校生活をおくっていた。

廊下ですれ違う時や放課後に視線を向ける程度だった。

三年生になりまたN君と同じクラスになった。

中学時代からの親しい友人と思っていたN君と同じクラスになり、また以前のように付き合っていこうと思い接したが、N君に無視されるような事が多かった。

高校入学からこの2年間でN君の生活の中心は部活と部活仲間になっており、ある日

N君から直接「君は中学時代のいい旧友の一人だよ」と言われてしまった。

旧友? 同じクラスなのに旧友なのか??

愕然とした。少し悲しさも覚えた。

N君からは無視されるような状態が続いた。

それ以来、同じクラスにいながらも私はN君に距離をおくようになった。


三学期に入り、受験シーズン本格化。

大学進学率が99%の進学校。

地元の国立大学を目指す生徒、首都圏や関西圏の国公立大学や有名私学を目指す生徒など授業もほぼ自習状態で、定期的にホームルームで、それぞれの生徒が合否を報告する時間が持たれた。

中間報告の時、私は数校の私学には合格し、このあとの国公立大学の二次試験に備えていたが、N君は年末までに決まる部活での推薦入試には選考漏れになり、目標にしていた私学受験も不合格であった。浪人したくないのか日本中で受験できる至る所の私学を受験しまくってるようだが全滅であった。もちろん最後に控えている国公立大学なんて受験できる実力もない。

N君は青白い顔色で、不安からくるのか、体調も崩しているようだった。


休み時間、N君は廊下の窓辺で独り立っていた。

数か月ぶりにN君のそばに近づいてみた。

「よお N」

N君は私の顔を見るなり微笑んだ。

きっと優しい言葉でもかけてくれると期待したのだろう。

私はN君に言った・・・

「大学全部落ちてるらしいな。部活の推薦もダメで、レベルの低い大学も受けまくってても全部ダメ!! 中学の時は勉強できると思っていたけれどオマエってかなりのバカだったんだ! 受験料だけでも100万くらい無駄使いしているのか?

親も泣いているんじゃないのかな???」

私の言葉にN君の青白い顔色が真っ赤に変わった。

殴りかかってきたが、力もなく、すんなり除けられた。

「そんな暴力、大学受験どころじゃないぞ!退学だ!高校中退だ!」

私は笑いながらそう叫んだ。

すると、N君は廊下の窓から飛び降りた。

N君は自殺した。

そして、私の復讐は終わった。


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予習と復讐 三十六太郎 @36tarokaku

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