第19話・予想外の伏兵ー7

「因みに前回対戦は当時の中学三年生同士、現在高校一年です。また、開催地は都内の津島遊園地跡地でした。よって、私の私見ではありますが、相手がたとえ経験者だとしても、年齢的にも立地条件的にも、あなた方の方が有利かと」


 言われてみれば、冬人と転校生の赤司以外にとって、ここは自分の庭の様なものだ。

 通ったのは一年足らずとは言え、学校内の事は殆ど熟知している。

 年齢差も僅か二歳ではあるが、高校一年と三年とでは、明らかに違う。


「こちらからは以上です。これから質問があったら聞きますが、一つだけ注意しておきます」

 これ以上何があるのかと、一同が固唾を飲んだ。


「既に競技は始まっているという事をお忘れなく」

 そんなことはさっきの放送で分かっていると、全員があきれ顔だ。

 だが、その言葉の真の意味を、後々痛いほど味わう事となる。


「姉ちゃん、姉ちゃん」

 余裕をかましてるところを見せようと、努めて軽口でしゅうが手を挙げた。


「バスのおっさんが百億とかって言ってた、あれはなんだ」


 バスのおっさんとはジンの事だ。


「あなた方が奪った年齢は、国で買い取らせて頂く事になっています。その額、一年分で一億、つまり、このナイフで僅か十秒差すだけで、百億円という意味だと思います」


 冬人が幾度となく思い出していた『EraseのE組』というフレーズは、何年か前に大ヒットした映画のフレーズ。


 その映画は、先生と生徒が殺し合い、生徒の側が先生を見事殺害した暁には、百億円もらえるという内容だった。


 しかしこれはそれとはまるで話が違う。


 まず、殺し合う必要はないが、相手は先生ではなく、見ず知らずの、しかも二歳も年下のどこかの生徒だ。


 そして映画の方は、クラス三十人で百億だが、こちらは一人一人がその金額をゲットするチャンスがある。


「相手、あるいはこちらの誰かが死ぬ可能性は‥‥‥」

 そう呟いたのは壮太だ。確かにその危険性ははらんでいる。


「そう思うのでしたら、加減してあげたらいかがですか。何も無理に一人から百歳分回収する事もないでしょう」


 その言葉は、場合によっては、相手の命を奪ってしまう可能性もあるという事を意味していた。

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