試験 VS うんこ

 うんこしたい。

 めっちゃうんこしたい。

 うんこもりもりうんこもりもり。


 試験中なので教室の外に出ることができない。正確には出ることはできるのだが、そうすると試験問題を全て解くことができない。俺はうんこと試験を天秤にかけた、究極の二択を迫られていた。

「うんこ、ううんこ、ううんここ…」

 ギアル・ギギアル・ギギギアルみたいなことを小さく囁きながら、試験問題を解いていた。頭がうんこでいっぱいになっている。

 正直もう限界に近い。タピオカジュースを買うために大勢の人が行列を作るように、うんこが肛門で行列を作っている。うんこもインスタ映えがしたいのだ。


「うんこ、うんこ、うんこっこー♪」

 うんこのうた(作詞作曲:俺)を小声で歌いながら試験問題を解く。口でうんこうんこ言っておけば、頭からうんこが抜けて試験に集中できるのではという算段だ。

 しかし逆効果だった。ますます頭がうんこで満たされる。お腹がジリジリとした痺れる痛みに襲われる。トイレに行けという弱い自分が、苦痛をキョダイマックスする。



 この現代社会の試験、何としてもいい点数を取らなければならない。

 もし現代社会の試験が80点以上だったら、新しいiPhoneと買い換えてもらうと親と約束した。今のiPhoneは5年くらい使っていて画面もヒビだらけのボロボロ。スペックも足りず、オンラインゲームをやるとカックカクで「クソ回線はROMれ」と煽られる始末。

 だから何としてもいい点数を取らなければならない。


 しかし、うんこめ。俺が何をしたっていうんだ。俺は昨日、ココイチのハンバーグカレー4辛大盛りを食べただけだし、今朝は試験にために丼を食べただけだし、学校では眠気覚ましにキンキンに冷えたコーヒー牛乳を飲んだだけだ。

 また下腹部から強烈なだるみと痛みが襲ってくる。早くうんこを出せ!さもないと人質うんこを殺すぞ!と大腸から脅迫を受けている。

「うんこ、、うんこ、、、」

 何としても試験でいい点を…いい点を……うんこ…うんこうんこ……

うんこうんこ



 そうか、閃いたぞ。

 トイレに行くな、とは言ってない。

 トイレに行って、すぐ帰って来ればよいのだ。時間が大幅ロスしてしまうが、このまま苦しみながら解くより効率は高くなるはずだ。


 スッと手を上げてアピールする。気付いた先生がこちらに向かってくる。

「どうした、松本くん?」

「トイレ行っていいですか?」

 もう耐えられない。今すぐトイレに行きたい。行かねばならない。

「うんこか?」

 謎の問いかけが飛んでくる。

「うんこです」

「なら、ダメだ」

 予想外の返答に、驚愕。

「ど、どうして?!」

「私はうんこ教の信者だからだ」

 またしても予想外の返答。


「うんこ教では、ウンコーの四戒律を守ることが義務付けられている。

1.うんこを信仰せよ

2.うんこを健康に保て

3.うんこを食べるな

4.うんこを高校一年生の現代社会の試験中にするな」

「何でそんなピンポイントなんですか?!」

「だから松本くんはうんこをしてはならない」

 そろそろ肛門にうんこがうんこっこしてしまう。破裂する。ウルトラうんこバーストしてしまう。

「このままでは、教室中が大変なことうんこ塗れになりますよ?

「神典の教えは絶対だ。死んでも守れ」

 くそっ!この頑固なハゲ教師を納得させる方法は…

 …ってあれ?おかしくない?俺は決定的な矛盾に気付く。


「そもそも、俺はうんこ教を信仰していないのに、その教えを守る必要があるんです?」

「お前はウンコ・ウンココを信じないのか?」

 話を逸らされた。どうしてもトイレに行かせたくないようだ。

「うんこしたいですうんこ」

「ダメです」

 ダメですと言われてブリュリュリュリュしそうになったがなんとか堪える!しかしうんこは肛門からはみ出しかけていた!このままでは心身ともにホーリーうんこベアしてしまう!

「うんこ…うんこ…」

 うんこうんこうんこうんこうんこ…

「U・N・K・Oーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


 叫びながら勢いよく席を立ち、教室の出口へ向かう!あっけに取られていたハゲ教師もやがて追いかけてきたが、もう遅い。

「ウンコォォォォォーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 全速力で走る。今100mのタイムを測れば間違いなくサニブラウンを超えられる。

 あっという間にトイレに着いた。そして、うんこをした。

「ぅんこぉ…」

 う、ん、こ…。




 さて、これで試験に集中できるぞ!

 ハゲ教師のせいでとんでもないロスになってしまったが、今すぐ帰ればなんとか

「きーーんこーーんかーーんこーーん」


 終わった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る