友達との再会

勝利だギューちゃん

第1話


「ねえ、私の事、覚えてる?」

「・・・」

「その様子じゃ、覚えてないみたいだね」

「あのう、誰かと勘違いしているのでは?」

「してないよ。君、荒川秀一くんでしょ?」

「そうだけど・・・」

悲しそうな顔をする、少女・・・


「昔は、よく遊んでたのに、仕方ないね・・・」

「あのう、君は一体?」

「自分で思いだして、いつまでも待ってるから・・・」


子供の頃には見えていたものも、大人になるにつれ、薄れていく。

そしてそれは、現実だったことでも、夢として片づけられる。

ここでの夢とは、寝ている時に見る、夢の事・・・


そして、いつしか消えていく・・・


「ねえ、荒川くん、少しいい?」

「何?佐倉さん」

クラスの女子に、声をかけられる。


あまり、話をしたことはない。

ただの、クラスメイトに過ぎないか、それ以下・・・


何のようだ?


「なにぶつくさ言ってるの?」

「いえ、状況説明を少し」

「誰に言ってるの?」

「タイムテレビでこれを見ている未来の方」

やはり、あきれた顔をしている。


「まあ、いいわ」

「で、何?」

「荒川くんって、幼稚園は、かきつばた幼稚園じゃなかった」

「そうだけど・・・あの長ったらしい幼稚園名のところだったね」

「うん」

「でも、どうして?」

佐倉さんは、笑う。


「荒川くんは、何組だった?」

「コスモス組だったかな・・・」

「私は、カトレア組だったんだ」

とても、はしゃいでいる佐倉さん。


「でも、どうして?」

「昨日、幼稚園の卒園アルバム見つけて、もしかしたらと・・・」

「物持ちいいね」

「荒川くんは、残してないの?」

「捨てた」

「どうして?」

「思い出したくない」


偶然の出会いに、感激するところかもしれない。

でも、僕には、嫌な想いでしかない。


もう、封印したいのだ。

なので、佐倉さんの行いは、傷口を蒸し返される結果となった。


佐倉さんは、寂しそうだったが・・・

まあ、すぐに元に戻るだろう。


そしてもう、会話をすることは、ないのだ。


家に帰った僕は、どっと疲れた。

ベットに、横になると、そのまま眠りに落ちた・・・


「やあ、また会ったね」

「君は、この間の?」

「どう?私の事、思いだした?」

「・・・いや・・・」

「ヒントを与えあげたのに・・・」

「佐倉さんの事か?」

「うん」

少女は頷く。


「悪いが、佐倉さんと同じ幼稚園というのは、初めて知った」

「佐倉さんの事じゃないよ。幼稚園のこと」

「幼稚園?思い出したくないな」

「だよね。友達はいなかったもんね」

悪かったな。


「でも、ひとりだけ、いたよね」

「誰だよ、その子・・・」

「私だよ」

「えっ?」

「だから、私があの頃の、君の友達・・・」

「どういうことだ?」

少女は、何かを考えているようだ。


「まさか、イマジナリーフレンドとか言わないよな」

「外れ、ちゃんと存在しているよ。形としてね」

「じゃあ、一体・・・」

「だから、君が自分の力で思いだして、待ってるから」

「期限は?」

「無期限だよ・・・」


眼が覚めた。

リアルな夢だ。

覚えている・・・はっきりと・・・


≪今日から、このコスモス組で、ペットを飼う事になりました≫

≪はーい≫

≪先生、何を飼うんですか?≫

≪ハムスターです。≫

≪わかりました≫

≪で、お世話係を決めようと思います≫

≪荒川くんがいいです≫

≪賛成≫

≪荒川くん、お願いしますね≫


人間というものは、嫌な事は弱いものに押し付ける。

拒否権はない。

多数決で決められ、責任は全部背負う。

そして、周りはほったらかしなのだ。


でも、よかった。

人と付き合うよりも、ハムスターの方が楽だ。

なので、好都合だった。


なので、小さいながらに、ハムスターについて調べた、

色盲色弱で、眼はあまりよくない。

その代わり、聴力と嗅覚が発達している。


意外と獰猛で、共食いもする。


寿命は短くて、せいぜい2年。


このハムスターは、雌のようだ。

なので、星から、キララと名付けた。


当然、他の生徒は、僕に世話をまかせっきりで、何もしない。

まあ、よかった。


キララといるほうが、楽しかった。


しかし、先に述べたように、ハムスターの寿命は短い。

死んだ時は、僕ひとりの責任にされた。


その事で、卒園までいじめを受けるが・・・

でも、他の人には真剣な話し合いを持っていた。


自分たちは何もしなくて、責任は弱者にかぶせる。

人間とはそういうものだが、幼稚園以前から、育成されていくのだろう。



「思いだした?」

「キララ・・・なの?」

「うん、そうだよ」

「僕の事、恨んでるだろうな」

「恨んでたら、来ないよ」

「なら、どうして?」

「ありがとうを言いたかったんだ」

「嫌味か?」

「違うよ」


「でも、どうして人間の格好なんだ?」

「このほうがいいでしょ?それに・・・」

「それに?」

「私はもう、人間に転生してるんだ」

「そっか・・・」

「驚かないの?」

「ああ」

どうせ夢だ・・・


「相変わらずだね・・・じゃあ、近いうちに・・・」


眼が覚めた・・・


「近いうちにって、どういう形で会うんだ?」

ベタな展開でないことを、祈ろう・・・


数日後・・・


近くの公園で、大きなひまわりを見つけた。

思わず見惚れてしまう程、美しかった。


「ひまわり、お好きなんですか?」

後ろから声をかけれるが、そのまま答える。

「ええ、好きです」

「私もです」

「そうなんですか?」


後は、振り返っていないが、笑顔であることは、わかった。


「ひまわりって、凄いですね。小さい種なのに、大きい花を咲かせる。」

「確かに」

「私たちも、そうありたいですね。荒川秀一くん」

その言葉に振り返る。


僕は、言葉がでなかった。


「ようやく、会えたね、また、仲良くしてね」

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友達との再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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