第17話 イギリスのジェマ③
「剣にどんな効果があるのかわからなかったため触れなかったのではなく、右手で防げば自分の右手が切り落とされるからだ。」
左にのみ集中をすればある程度避けられないことはない。
当たれば即死確定のクソゲーだけど。
かといって左手にばかり気を取られていれば右手で俺のことを抑えて左手で触れようとしてくるため、気を抜くことはできなかった。
間合いを管理しながらどうにか避けようとするが、この狭い空間ではかなり戦いにくい状況であった。
「とは言ってもお互い忙しい身分だしな!」
「あぁ、じゃああんたが早くこの手に触れられてくれるとかなりこちらとしては助かるんだけどね!」
「それは無理な相談だ!クッ!」
紙一重でかわす度、少しでも触れられるとそこに死が待ち構えているという恐怖が身を襲う。
自然と戦いに離れていたはずだったが『ジェマ』と戦うということになるとここまで精神を消耗するとは思ってもいなかった。
どうにか広いところで戦おうと、戦いながら奥のほうへ進むと、机や椅子が散乱していた。
近くにあった椅子の背もたれを投げつけると男は左手でキャッチをし、たちまち黒い煙をあげて蒸発をした。
「お前の能力、現実的ににあり得るものではないな!」
「『ない』というわけではない。しかし実態するか、といえば『ない』けどな。」
「どういうことだ……?」
「近年、世の中はあらゆるものがデータ化されて蓄積されている。この発展している能力もデータ化されているものの一つだな。しかし、あんたはデータを触ることが出来るのか?」
なるほど……存在はしているが手で触れることはできないものだ。
理論なんかもその存在はしているが触れることはできないものの一つにあてはめられる。
ならば、マクスウェルかディラックか……しかしあの英雄たちにこの世から物体を消し去る能力というのは関係していなかったはずだ……。
「いや……お前は近代の英雄ではないな?」
「へぇ、どうしてだ?」
「近代の英雄の中には非科学的な能力を持ち合わせた人間はいない。」
データ……考えろ……データのように存在はするが目で見ることはできない存在……。
嫌、ならばどうしてその目で見ることが出来ないものを現実世界まで引っ張り出すことが出来た?
「かといって、神に等しい能力を持ち合わせている人間でもないと見た。お前は物語の中か伝記などに記されている英雄だな。」
ならば逆だ……この世界をデータとして見ろ……。
データだとしてこの世界から謎の力で『
「ウイルス」
俺の口角は少し上がり相手を睨めつけるかのようにしながらニヤけていた。
こいつの英雄の正体がやっとわかった。
パソコンのウイルスには代表的なものが存在をしていた。
このウイルスは中に入ってしまったが最後初期化をしない限り絶対に治らないと言われてしまうほど強力なウイルスであったという。
その名も
『トロイの木馬』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます