第8話 二度目
「へぇ、随分と派手な登場してくれるじゃん!で、何の英雄化までは教えてくれないのかな?」
彼女は不敵な笑みをしながら俺に対して問いかけてきた。
「先輩の能力も教えてくれるならいいっすけどね。」
「じゃあ交渉決裂ってことだね。ドラゴンは真っ二つにされちゃったしなぁ……。じゃあこれならどう?」
「岩……?」
彼女は一つのかなり大きな岩をまだ壊れている体育館の上空から降らせてきた。
そしてその岩を触ることなく粉々に砕いた。
すると、そのばらばらになったのち、徐々に集まっていき人のような形を成した。
いや、人と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。
「さぁ進行して!私の巨人!」
巨人は一歩、一歩を進むごとに地響きを立てながらこちらへ近づいてきた。
遅いとは、一歩があまりにも大きいためすぐにこちらへ追いつく。
女子生徒をとりあえず安全なところに置かなくては……。
「ちゃんと捕まってて!」
彼女を抱えたまま全速力でその場から離れる、学校内では俺が巨人と戦っている間に連れていかれてしまうだろう。
なら……
「まずはこれ!」
女子生徒の目を手で隠しながら、
西条先輩とゴーレムは一気に視界を奪われ、その場3秒間は動くことが出来なかった。
「閃光!?こんなものを使う英雄などいたの!?」
いや、厳密には閃光を史実として一度も出したことはない。
しかし、長い偃月を歴史の中でこの英雄が経ていくうちに、人々の中にこの英雄のイメージは光、希望、輝きといったものが刷り込まれていった。
ゆえにゲームなどではこの英雄のイメージが光属性や黄色なのである。
「灯台下暗しってね。」
女子生徒を体育館のすぐ近くにあった掃除用具入れのロッカーに隠した。
そしてその後すぐに体育館の入り口付近に移動をした。
「クッ!校舎のほうに隠してきたか?私は彼女を探すから君は彼の相手をよろしくね!」
西条先輩は一目散に校舎のほうへと向かっていった。
だからと言って彼女がそんな手間のかかるようなことはしないだろう。放課後とはいってもほとんどの生徒が残ってるため、彼女が脅しをかける必要もある。
なら巨人は早めに倒しておかないとな……。
「一体か、舐められたもんだな。ドラゴンのときと言い、本当に俺を倒す気があるのか?」
剣を構えなおし、剣先を巨人に向ける。
目を閉じ、深呼吸を一度する。
そして目を開くと同時に一振りを浴びせる。
巨人は地面へと膝から崩れ落ちた。
「これが……『最後のジェマ』の力……。」
掃除用ロッカーのほうからつぶやきが聞こえた。
体育館は巨人が膝から崩れ落ちると同時に埃が一気に舞い上がり、静寂に包まれた。
「さてと、西条先輩はどこにいるかな……。」
彼女の気配などが探れるわけでもないのでしらみつぶしに探していくしかない。
「いやぁ、ここにいるとは思わなかったよ。それに巨人までやっつけちゃうとはね。」
入り口から拍手と同時にさきほど聞いた声が聞こえた。
カマをかけてるだけか?それとも本当に気付いているというのか?
「何故わかったかって?私の本職はこっちなんだよ。もともとの私の戦闘能力は低いの。でも……」
後ろのほうからこの学校にまだ残っている生徒たちが出てきた。
およそ300人はいるのではないだろうか。
その生徒たちが一糸乱れぬ動きで整列をしていた。
「洗脳……か。」
「そう、人間を操るのにはその人間と意思をつなげて操作する必要がある。だから細かな命令をするのには普通一人につき一人。でも私の場合は……。」
「1000くらいかな~。」
「君とは言ってもレプリカやグレッツォを一度にこれだけ相手するのはどうなのかな?かくまっている女の子を素直に引き渡せば今回は退くけど?」
「『今回は』ってことはまたここに来る気あるんだな。」
「だって私の学校だし。」
「お前のではない。」
「この子たちもみんな私に忠誠を誓ってる時点で私の物同然でしょ?」
「ジェマはみんなお前みたいなやつらなのか?」
「一緒にしないで!あんな奴らと一緒にされたくはないわ!私はまとも!」
彼女は怒りながら吐き捨てるように言った。
「そうか、悪かったなそりゃ。」
「で?どうするの?」
「お前を殺して洗脳を解く。」
俺はすでに怒りに満ちていた。
しかし頭の中は自然に冷静でどうすれば彼女の息の根を止められるかを考えていた。
一振りだ。
決着は一瞬。
「速っ。」
次の瞬間彼女の左腕が地面に落ちた。
彼女は怒りに満ち、俺のことを睨むと左腕を拾った。
俺はそのまま彼女に背中を向けたまま無言で立ち尽くした。
そして剣を収めた。
「一週間で二度も退かなきゃいけないなんて人生で初めてだよ。でも、兜の中身が分かっただけでも大きな収穫だね。気分は実に最悪だけどね。」
「一撃で仕留めることが出来なかったのは人生で初めてだ。生身で戦えないなんて嘘つきやがって。」
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