シニガミさん

チャチャマル

第1話 【シニガミさん】と強欲な商人


強欲な商人が御金を集めていく御話。

お金が好きな大きな商会の一人息子のお話。

その男の名はアステロ。

アステロはお金を集めて悪魔と取引をした。

残ったものは小さな願い。

アステロと悪魔しか知らず、他の者も気付けもしない。

小さな願いを叶えるための沢山の金貨。

それが悪魔との願いの果てに得られた物。

商人は築けなかった。

好きな金集めしか見えなかった。

気が付けば誰も周りに居なかった。

誰もいてはくれなかった。

泥だらけになって、必死にあがこうとしている君に。

そうだね。アステロ、君の死に際には私がいよう。

君の抱えた寂しさを知らせるために。


「私の死神はあなたかい?」

「・・・あぁ私だ。」

「私の生きた人生には今、虚しさだけが残った。」

「・・・そうか。」

「今だからわかってしまった。」

「・・・知っているよ。」

「生きるとは、ひとを愛するとは、斯くも難しいものなのか?」

「・・・いいや、他者を思いやれたら難しくはないよ。」

「私には難しい。私にはできなかった。」

「・・・できたさ。できないのならそれはただ、君が見ようとしなかったから。」

「まだ間に合うと思うかね」

「・・・遅い時などないからね。生きているうちなら早い方だと思うよ。」

「そうか、ならもう遅いな。私はもう死んでしまった。」

「・・・行くのかい?」

「後悔しかない。・・・・・・だが、それでも。」

「・・・何も言わない。」

「ありがとうというべきだろう。」

「・・・何をかね?」


「――こんな私の死に際に、君がいたことにだよ。」


「・・・アステロ、君は善人ではなかった。・・・だが、・・・悪人でもなかった。それは素晴らしい事だった。私は君を覚え続けよう。君が最後に死を前にして気付きを得たその姿を。 もう時間だ。さようなら。」

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