四話

「さあ。散らかってるけど、入って入って」

「お邪魔します」 

 ――久しぶりの美音子の家で緊張する。

「美音子、あの……」

 幸子は言うぞ、今日こそ言うぞと意気込んでいた。

「なに?」

「久しぶりの美音子の家だけど、あ、あんまり変わってないなーって思って」

「あはは。そんな半年で変わるわけないよ」

「そうだよね!」

 幸子は自分のヘタレさに情けなくなった。

「幸子から会いたいって結構珍しいよね」

「え、そうだっけ?」

「そうだよ。でも、嬉しかった。私も幸子に会いたかったから」

 美音子の言葉に幸子の心臓が高鳴った。

「私も美音子にそう言ってもらえると嬉しいな」

 またしても無言が続いた。

 どうして親友の家だというのにこうも緊張しなければいけないのか。

 もっと自然体にしなくては。

 幸子は思いを伝えたいと美音子に対する好きという気持ちで心の中がグチャグチャになっていた。

「み、美音……ひっ!」

 幸子は美音子の名前を呼ぼうとした途端、軽い過呼吸に陥った。

「大丈夫!?」 

「ご、めん、袋ある?」

 美音子はすぐに部屋にあったコンビニ袋を取り出した。

「すー……はー……」

 美音子は幸子の背中を優しくさすってくれた。

「すー……ごめんね。来て早々過呼吸になっちゃって」

「大丈夫だから幸子は横になってな」 

 美音子の優しい声に幸子は泣きそうになった。

「実は私、ずっと美音子のことが好きだった……小学生……いや、幼稚園の頃から」

 美音子は目を丸くしていた。

 当たり前の反応だ。過呼吸起こして、横になった親友からいきなり年間片思いしていたと言われれば、誰だって驚くだろう。

「うん。知ってたよ」

 予想していなかった答えに幸子はガバっと起きた。

「……ウソ……」

「ウソじゃないよ。だって、幸子わかりやすいんだもん」

 今まで秘めていたと思っていた気持ちが美音子には筒抜けだったことに幸子は顔が真っ赤になった。

「幸子、自分だけ可哀想だと思ってるでしょ」

「そんなことないよ」

「私ね。幸子が恋人作ったとき、本当に死のうかと思った」

「そんな……だって美音子、好きな人いるって言ってたから……私も諦めようと思って」

「好きな人いるって聞かれて『いる』って答えただけでしょ! その好きな人が自分かもしれないって思わなかったわけ?」

「思わないよ! ……えっ?」

「そうだよ。私も幸子のことずっと好きだったんだから!」

「……ウソ……じゃない?」

「こんなウソついてどうするの! 私だって20年間ずっと幸子のこと忘れたことなかったんだから! だから、幸子、私を抱いて!」

「え、え!?」

「幸子が好きでずっと誰とも付き合わなかったの。幸子、責任とって私を抱いてよ!」

「わ、わかった!」

 幸子の頭の中はしっちゃかめっちゃかだ。

 玉砕覚悟で告白したら逆に告白され返されるなんて思ってもいなかったのだから。

「じゃあ、抱くね……」

「抱いて」

 美音子はベッドの上で仰向けになり、両手を広げて言った。

 ここまで言われてしまうと幸子も引き下がるわけにはいかない。

 幸子は美音子のスカートへと手をゆっくり滑り込ませる。

 幸子の指先に美音子の大事な部分が触れる。

 お互い動悸が速くなってくるのがわかる。

 「美音子、ごめんね。ずっと気づいてあげられなくて……」

「私の方こそ……自分から告白する勇気なくて、ごめん。さっき、知ってたよって言ったけど、怖かったの。本当に幸子が私のことを好きか。自信がなかったの」

 ずっとお互い求め続けていたのも知らず。すれ違っていたとは夢にも思わなかった。

 美音子の敏感な部分は早く触って欲しいと言っているかのように硬く、湿っていた。

「あっ……」

 美音子の唇から艶やかな声が漏れる。

「幸子……幸子……」

「なに?」

「好き……」

 幸子は今のできごとが全部夢なんじゃないかと逆に不安になるくらい幸せだった。

そこから先は早かった。

 20年分の愛をお互いにそそぎ込んだ。

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