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「地震だ! かなり大きいぞ!」
どうやら地震が発生したようであるが、自分を支えてくれる人たちを失い立つことすらできず、その場に崩れ落ちているタカシには、地震の揺れすらも感じ取ることはできなかった。
だが、そんなタカシにどこからか声がかけられた。
『タカシ……落ち着き……なさい』
確かに自分を呼ぶ声が聞こえた。
タカシはハッとその声に耳を傾ける。
『とりあえず……いまは……ここから離れなさい……』
何度もその声が、頭の中に直接語りかけてくる。
『あなたはだれ? 俺を知ってくれている?』
『そう……私はあなたを……知っている……安心しなさい……あなたは……ひとりじゃ……ない……』
頭の中でその声に応えると、確かにそう返してくれた。
俺を知ってくれている。誰かはわからないけど、ひとりぼっちの今はその事実だけでもタカシは膝を、心をなんとか持ち上げることができた。
次の瞬間、『バチ』っという音とともに停電が発生した。
まだ午前中であるためそこまでは暗くはないが、担任は停電した事実自体に驚いている。
(逃げるなら今しかない)
一瞬の隙をついて職員室から駆け出していった。
職員室から出ると同時に揺れは収まった。
地震は揺れが長く続いていたものの、震度はそこまで大きくなかったのか被害は出ていないようである。
廊下は生徒たちが教室から出てきたり、友達同士で安否を確認しあったりとかなり騒ついていたため、少々走ったところで目立つことはなさそうだ。
「よし、今なら誰にも気付かれずに外に出られる。」
廊下を一心に走っていると、昨日まで自分がいたクラスの前に差し掛かった。
そこで、マサと柳原と目が合った気がしたが、お互い一言も発することなくすれ違い、タカシは駐輪場へと駆けて行った。
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