第2話 死後の世界

『ねぇ、とうちゃん、とうちゃんは、死ぬの怖い?』

『おいおい、何だ、急に』

『ねぇ、どお?』

『どお?って、まぁ、そりゃー、怖いさ。何で急にそんな事聞くんだよ』

『んー、何でだろ。気になった』

『なんだそれ。そんな事気にしてんのか?』

『最近、マンガとか小説とか、死んで転生して、勇者になって魔物と戦うって、話よくあるんだよね』

『転生?』

『生まれ変わる、みたいなもんかな。僕にもよく分かんないけど』

『その話と死ぬのが怖いのと、どういう関係があるんだ?』

『ないよ。関係は』

『何だよ、じゃあ』


とうちゃんは、笑いながらズッコケる仕草をする。

古くさい、仕草。

そんなズッコケはスルーして話を続ける。


『人間は、死んだらどこに行くの?』

『そりゃー、天国か、地獄だろ』

『天国か地獄に行って、その後、どうなるの?』

『質問が多いなぁ。どうなるか分かんないから、怖いんじゃないか?死ぬのが。また、何かに生まれ変わるんだろうけどよ。ほら、だから、転生、だろ』

『じゃあ、今が、転生したその姿だったら、なんで今、魔物と戦わないんだろうね』

『あん?なんだって?』


どうやら、とうちゃんにはちょっと難しいらしい。


『だから、魔物は、化け物の姿をしてる必要はないじゃない?人間の姿で、中身が魔物なヤツはいっぱいいるでしょ?そーゆうヤツらと、戦う勇者もアリなんじゃないかなー、と思うんだ』


とうちゃんは、少し考えていた。


『あー、あー、なるほど、なるほど。アレだな。俺が、ワンマン経営で好き勝手会社の金を使い込む社長とその息子に立ち向かって、会社の経営を立て直す!みたいなのも、勇者になるのか。な?そういう事だろ?』


『そうそう!』


珍しく冴えてるとうちゃんに、少し感動した。


『転生して勇者になれるんなら、今だって、頑張れば、なれるんじゃないかな』

『何かよく分かんねーけど、とうちゃんも頑張るかな。勇者になれるかな?』

『ん。頑張れば、なれるよ。でも、ちゃんとスキル上げしてからじゃないとダメだよ』

『スキル上げかぁ。大変だなぁ』


とうちゃんは、単純だ。

魔物も勇者も転生も、マンガとか小説の中の話なのに。


でも、もし“今”が、死後の世界なら、面白いな。

だって、誰も、証明出来ない。

“今”が死後の世界じゃない、なんて。






 

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