人間界に転生した創造主のお話

トマト教信者

神の気まぐれ

「暇だなぁ。何か面白いこと、無いかなぁ」

すぐ近くでは部下の天使族たちが朝からせっせと書類の確認、整理を行なっている。


ここは楽園エデン。仕事と言っても、生まれる人間、死んだから人間の魂を判別するだけの結構退屈な仕事。


『暇でしたら、お仕事なさっては?創造主アムル様?』


と、女神が顔を覗かせてくるも、自分の仕事なんてほぼあってないようなもの。

下界、つまりは人間の住む世界を見て、新たなる知識や技術、文明を与えるだけ。

ここでみている人間界がどんなに楽しそうに見えることか……


「……ん?待てよ?」


我ながら今日はよく冴えている。

羨ましいだと?なら、私も行ってしまえばいいのだ。


「俺、人間になる!」

『何言ってるんです?創造主としての仕事はどうするんですか?』

「そこを考えず見切り発車でモノを言うほど愚かで無いわ。考えはある。」


人間たちにモノを作る知識や技術、文明を発達させるだけの能力を与えてしまえばいい。

そうして、創造主の座を概念的なものとして消してしまえば混乱は起きない。


「やはり、冴えているぞっ!」


そうして私はすぐさまそれを実行に移すため、転生する先の家を探し始めた。


「んー、どうしようかー。」


やはり先ずは美味しいものをたくさん食べたい。楽しいことをたくさんしたい。

そのために場所選びは怠れない。

以前見たときは城があるところよりも畑がたくさんあるところの方が平和で美味しいものが多そうに見えた。いやしかし…


「お?ここなんかいいのでは?」


手に取った資料の中に比較的平和そうな地域を見つけ、それに見入る。


「ほぅ、バルト領…か。」


そこを治めている子爵家の次男がそろそろ生まれるらしい。

そこに行けば姉が2人、兄が1人の4人兄弟というものになるらしい。

やはりこういう時、運命を感じたらすぐにでも決めてしまったほうがいいというしな。


「転生、するか!」

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