第4話

「私は、もともと病気だったの」

「うん」

志奈さんの語りに相槌を打つ。


「お医者さんから、20歳までは生きられないと言われて・・・」

「うん」

「それならば、好きな事をしたいと・・・芸能界に入ったの」

「そうなんだ」

「もちろん、病気であることは、隠してね・・・」

志奈さんは、真剣に語る。


「幸い、小さい役とはいえ、たくさんいただいたの」

「よかったじゃないか」

「ありがとう。でも・・・」

「でも?」

「神様って、残酷よね。ある日突然、容体が急変して、そのまま・・・」

「そうなんだ・・・」

さっきまでの明るい表情は、なかったが、眼は輝いていた。


「後悔はないよ。一生懸命に生きてきたもの。君と違ってね・・・」

「悪かったな・・・」

クスっと、志奈さんは微笑む。


「なんてね。私も以前は君と同じだったよ」

「俺と同じ?」

「うん。自分の病気をうらんで、自堕落に生きてたんだ」

「見えないね」

「そんな時、お芝居に出会ったの。とても、人々の心をつかんでいて、

私は感動したの。

だから、お芝居の世界に飛び込んだんだ。自分の生きた証を残したくてね」

役者は死んでも、作品は残る。

その作品の中で、役者は永遠に生きる。


「死ぬのは運命。怖くない、ただ・・・」

「ただ?」

「先日、初めて主役をいただいたの。せめて、それだけは演じたかった。

それが後悔なんだ・・・」

「それで、生き返りたいと・・・」

志奈さんは、頷いた。


「そして、君を見つけたの。昔の自分を見ているみたいで、助けてあげたかった」

「おせっかいだな」

「君にも、自分の生きている価値を見つけて欲しいの。

陰ながらサポートしたかったんだけど・・・」

「けど?」

「こういう事になっちゃった・・・」

悪戯っぽく笑う。


「で、生き返る方法はあるのか?」

志奈さんは、頷く。


「君が、心底行きたいと願う事。やりたい事を見つける事」

「この体でか?」

「うん、出来るよ。君なら・・・私も手伝う・・・」

「そしたら、君も生き返る事が出来るのか?」

静かに頷く志奈さん・・・


「でも、またすぐに、死んでしまうけどね、悔いだけは残したくないんだ」

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