第23話 門

 頭は空中に持ち上げられ、体は下に押し付けられる。僕はどうなるんだろう。

 すべては向こうからくる。やってくる。潮が満ちてくるように。日が沈んで闇が広がるように。

 僕の周りには無数の門がある。門は開いたり閉まったりしている。一つの門が開いて悪意の塊が押し寄せてくる。僕は必死で塊を殴りつける。ぐにゃりという手応えがある。呻き声が聞こえる。でも悪意の塊は僕から離れない。僕を覆い尽くそうとする。

 首が締め付けられる。両手で塊を握り潰そうとする。呻き声はするが塊は僕の顔に覆いかぶさろうとする。首を振る。両手に一層力を込める。塊の圧力に思わずよろける。手を緩めたらだめだ、やられてしまう。僕はふらふらしながら、必死に絞め続ける。

 昔こんなことがあった気がする。いや、僕はずっとこんなことをしてきたんじゃないか。この塊のにおいは嗅いだことがある。

 堪えきれずに僕は仰向けに倒れた。塊は一気にのしかかってくる。くそっ、くそっ僕は手に一層力をこめ、両足で蹴り飛ばそうとする。ぐにゃぐにゃと重い感触はあるが、突き放せない。

 じわじわと体の中に染み込んでくる。血管の中に入り込み全身に拡がっていく。口から鼻から耳から目から。

 塊と僕と。僕と塊と。もう区別はつかない。

 そうだ。もともとこういうことだったんだ。

 僕は笑った。声は出なかったけど腹の底から笑った。

 

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