第6話 雑木林

 雑木林が揺れている。麦畑の穂も倒れそうだ。

 雑木林は薄緑、濃い緑に交互に変わる。白いものが林の中に立っている。長い袖のようなものを振っている。お化けだよと友達が言う。僕は黙っている。

 雑木林にはクワガタがいる。朝早く捕りに行く。湿気と樹液と積み重なった落ち葉の匂いがする。

 幽かな低い音。足の裏に感じる。

 友達は言う。どこかに死体が埋まっていると。僕は黙っている。 

 誰の死体だろう。誰が埋めたのだろう。死体が音を出してるのだろうか。

 雑木林は広く広がっている。

 僕は雑木林を空から見下ろす。雑木林は小さな小さな面積しかない。畑の中にちんまりとある。空からは白いものは見えない。

 空にも幽かな低い音は広がっている。その中に僕はいる。

 地球の音なのかな。宇宙の音なのかな。

 僕の体の中から出ているようにも感じる。

 僕の手の指が少しずつなくなっていく。空間に溶けていく。溶けていく。

 すっかり体は溶けてしまい、一陣の風が僕の服を彼方に吹き飛ばしていくのが見えた。

 音の波の中に漂いながら、僕は眠った。

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