ただよふ
Aba・June
第1話 原っぱ
空は沈んでいる。雑木林の影絵。二本の欅が高い。
ここに父は幼い僕の手を引いてやって来た。赤蜻蛉の群れが来たという話しがあったから。
赤蜻蛉はいなかった。動くものは何もなかった。音の無い原っぱがあった。僕は虫取網を持ち虫籠は袈裟懸けで、黙って立っていた。風は吹いていただろうか。赤蜻蛉がいないけど悲しくはなかった。父の手を握っていた。
僕は、父と幼い僕の姿を空中から見ている。二人は黙って立っている。立っている。
原っぱにはいろいろな色がある。上から見るとよく分かる。地上の幼い僕には、夕暮れの暗さしか見えない。草いきれ。
僕は回りの空に茜色を感じ始める。
頭がふわっとして、父と幼い僕はどんどん小さくなっていく。そして原っぱの中に溶け込んで見えなくなった。
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