ラブ♡マイ♡ブライド
宮園クラン
第1話【幕】
◇主要登場人物◇
☆
∵
△
♡
-0-
予感がする 呼んでいるような気がする
-1-
3月の半ば。春はまだ遠く肌寒さしか感じない気温に身体をぶるぶると震わせながら、
(ここが
二年の浪人生活を終えて、晴れて国公立大学に合格した。次月より迎える医学部生活を前にして、自分探しと
(とはいえ、どうしたものだろう)
正直な所、勢いだけでここまで来てしまった感が
そんな具合で、
「
そこには老婆がいた。現代社会にとって違和感しかない――それこそ時代劇に出てくるような
「こんばんわ、おばあちゃん。ひとつ聞きたいのですが、ここは緑夜叉村で合っていますか?」
「質問を質問で返すとは、教育がなっていないね。とはいえ、そうだよ。この門を越えれば緑夜叉村の地内で、合っている」
「ありがとうございます。失礼しました、俺は
ハイキングに来たんです、みたいなニュアンスとトーンで質疑に応答した
「ぼうやが?どこからどうみても普通で、魔力のカケラも感じられない――ただの人間のぼうやが、こたびの儀式の妨害者・・・・・・・・・ひひっ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!そうかい、そうなのかい!おまえさんが選ばれた、いや選んだのかい!ははっ、あははは!よりにもよって、ぼうやが・・・・・・・・・くくっ、こりゃあ
状況は分からないが、
「あの女の子は、
色々と
-2-
《どこにいるかも分からない。名前もしらないあなたへ。いずれ死んでしまうその前に。どうかわたくしを助けてください。》
その声が――女の声が毎夜毎晩夢中にて聞こえるようになったのは、今となっては正確な日付は既に覚えていない。
ただ、消え入りそうな物悲しそうな、そんな声の主をなんとかしてあげたいと感じ、
日本海を背に山に囲まれたこの地まで、前述の通りそれなりに時間をかけて来たことに対しては、気だるさや面倒くささは
それでもいざ着いてからは、何をどうすれば分からない。今はただ地内に入り、当ても無く前に進んでいるだけなのだから。
(
夜の
どこぞの配管工みたいに飛び跳ね踏んづけ
寺、あるいは神社を足して割ったような建物。入り口とおぼしき扉には蛇のような模様が大きく
玄関らしき空間が無かった為、土足で板張りの床を進む。進んですぐに視界が開け、広間のような造りになっていた(どうやら住居の類ではないようだ)
明かりのともったまばらに配置されている置き
よくよく目を凝らしてみれば、足は床についておらず、代わりに両の手のひらをぺたりとつけ、まるで時が止まっているかのように、動かない。逆立ちのポーズのまま、
「こんばんわ、見知らぬ人。つかぬことをお伺いしますが、
「・・・・・・がらん、だと?」
バランスを崩し、そのまま床に大の字に、男は倒れる。倒れたその後、
「ぷっ・・・・・・・・・くくくっ、ぎゃーっはっはっはっはぁあ!
じたばたと手を足を床に叩きつけ、一向に治まる気配がない。なんだろう、ここの村人は笑いの沸点が低いゲラの集まりなのか。それとも普段よっぽど楽しいことがない、刺激のない生活を送っているのだろうか。軽蔑の念などは
「知らない、のですかね。ありがとうございます、夜分遅くに邪魔しました、それでは」
別の場所を探索するべくその場から立ち去ろうとする天に、おいおい待てよと男が呼び止める。
「そう慌てるなよ“おにいちゃん”?もらいが減るぜ?まぁ聞け。“おにいちゃん”が探している
ぴたりと、足を止めて振り返る。
「そうですか。ならばここはひとつ是非とも教えていただきたいのですが」
「タダで教える訳にはいかねぇなぁ。“おにいちゃん”が妨害者であるならば、まずはこの俺様――
目の前の男、
「はい?斃すとは。俺があなたを、ということでしょうか。なにぶん二浪するぐらいには頭が悪いので、要領が
「しらばっくれるなよ。こちとら折角戦闘モード入りかけてるってーのに、興が削がれる物言いは止めようぜ?要するにさ、殺し合いだよ。互いが互いの全身全霊でもって、相手を
「途中、とある老婦もおっしゃってましたが。その、“魔力”っていうのは何を指しているのでしょうか。知見が無い俺にも分かる様、説明をいただければとてもとてもありがたいのですが」
「・・・・・・・・・マジのガチに何も知らねぇんだな。いいぜ!“おにいちゃん”!冥土の土産に教えてやるよ。ここ緑夜叉村はかつての魔術師の
こんな風にな、と。言いながら
『
『
『
『
(!!!)
言い終わると同時に、び ゅ ん っ と、指を向けた先――壁際に位置する行灯が突如として
「ハーッハッハッハッ!どうだ、凄いだろう?ただの人間なんかには、絶対の絶対に出来ないだろう!?!」
「これが、特殊な能力・・・・・・」
思わず絶句する。視界が優れないとはいえ、天からみて、トリックや奇術のタネのようなものは感じられなかったそれは、紛れもない魔術であった。
「怖いか?恐ろしいか??呆気にとられてないでもっとビビれよ!4年と8ヶ月ぶりに楽しめると思ったら、能力者ですらねぇ雑魚の相手をする、俺ら番人達の気が晴れるってもんだぜ!!」
(つぶやいた後に、指を向けるだけで、対象を燃やし尽くす能力)
みると、既に置行灯だったものは黒い
「
「うんうん、そーだよな。ただの人間が、モドキとはいえ俺ら魔術師と
どうやらどうしてもどうやっても、相手は暴力においてのみで、この場をおさめたいらしい。
「そうですか、とても残念です。こんな所で、終わってしまうなんて」
一冊の本にたとえるならば、まだ序章もいいところ。背景や登場人物のイメージが固まりきっていない、そんな最初の最初で、今までの自分は終わってしまうのか。
「エラく余裕だな。だが、
先程と同じ様に、
『空を貫くは、一筋の――「遅い」
目を瞑ったのと同時に、
「がっ!!!!!!あ・・・あぁ・・・・・・・・・」
目を閉じたことで状況が判別できなかった事に加え、高圧の電気を生身に流された
「一般的に、それこそマンガやアニメやドラマとかで、スタンガンを食らった対象は気絶したりする
身体の自由が効かないまま、相手に
「しょ、食塩水・・・・・・・・・?」
「
乱れた呼吸を整える為に空いた口内に、ずっぽりとスタンガンを差込んで、最大電気量に調整を行った後、電源をオンにする
バジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ
それは、わずか15秒間の短い、とても短い時間でしかなかったのだが。
-3-
番人なる
何だかよくわからない鍵のようなものと、くしゃくしゃになった紙タバコの箱(ライターは見当たらなかった)と、メモ用紙。
用紙には場所および人の名前らしきものが書かれている。
処 爾 惨 至 終
門 門 門 門 門
水 箒 刑 数 ■
汽 谷 部 々 ■
氷 塗 牢 人 ■
汰 炭 庫 々 ■
(えぇー・・・・・・まだ3人以上も相手しなきゃいけないのか――だるっ)
顔を上げ、立ち上がると、
(次も、その次も、コイツみたいな馬鹿ならやりやすいんだけどなぁ)
一瞬、ほんの一瞬だけ、
齢二十にして、成り行きとはいえ人を殺してしまった。
正当防衛にしてはやりすぎだし、とはいえ野放しに出来るほど安全な相手でもなかった。
これ仮に警察とかにバレて捕まったら医学部通いの生活はオジャンになるのかなぁ、などと考えながら、
不思議と罪悪感は、一切無かった。
-4-
「勝っちゃったよ。凄いね。あの
よーし、と。
男は背伸びをしながら、爪先立ちで立ち上がり、自分がやるべきことを声高らかに、宣言する。
「おじさんがちょっくら、手助けしてあげよっと」
[FLAME MAN] is Breaked!!
To Be Continued...▶︎▶︎▶︎Next【毬】
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