相棒が俺にだけ厳しい件について
ナマ毛モノ
第1話 相棒が厳しい
「おらぁ!!!来やがれぇぇぇ!!!」
俺の挑発の声に黒い大きなモンスターが標的を定め睨みつけてくる。そいつは目を血走らせ、ポタポタと涎を垂らし唸り声を出す。
そいつの名はイビル・ボア。巨体で牙が大きく、獰猛で凶暴なモンスターだ。
「グオォォォォォォォォァァァァァァ!!!!!!!!」
奴が咆哮する。これは視界に入った者への死の宣告。常人なら恐怖しその場から動けないだろうが、俺は違う。これほどいい合図はないからな。そして、そいつの周りの土や草が宙に舞った。そいつは地面を抉りながら、俺に目掛け風を抉りながら突進をしてくる。俺は躱す動作をしない。ただ魔力を全身の筋肉に染み渡らせる。
「グァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「フンッ!!!!!!」
「グゥッ!?!?」
避ける必要はない。ただの突進など怖くない。俺は奴の大きい牙を掴み突進を受け止める。力比べで負ける気はしない。俺の自慢は魔力を自身の筋力を変え、
どんなモンスターに負けないこのパワーなのだから。
「グゥゥゥゥウ………ッッ!?」
「シャァァァァァァ!!!!!」
俺は受け止めたそいつを思いっきり上空へ放り投げる。すぐさま足に力を込め、上空にいる標的へ目掛け跳ぶ。空で戦う術を持たないそいつは何もできない。ただもがく事しかできないそいつへ拳による渾身の一撃を放った。
「オラアァァァ!!!!」
一撃を与えた瞬間、そいつの肉体は四散し肉片があっちこっち飛び散った。体を失った巨頭が地面へと落ちる。その直後俺も着地する。
「ふう……あっ!やっべ!強く殴りすぎたな…頭しか残ってねえ…」
かなり大きいイビル・ボアだったからな、かなりの量の毛皮なり食肉なり相当な物にできたんだろうが大部分が木っ端微塵になっちまった。
「まぁ、仕方ないか頭だけでも利用させてもらう。それと鎧と服も血まみれだな…またイリスに怒られるな…」
血まみれになった物を見ながら、相棒のイリスの怒る姿が目に浮かぶ。鎧なら整備屋に頼めば良いんだが、血のついた服は汚れは取れにくいし匂いも全然取れない。匂いに対して敏感なんだろう。だからモンスターなどの大量の血で汚すとすごい怒る。
「怒るだけなら良いんだけどなぁ……」
いつも俺の服は大体イリスが洗濯してくれる。ソロの頃は自分で洗濯してたんだが、ペアを組むようになってからはイリスがしてくれるようになった。理由としては俺の洗濯が下手すぎて服の臭いが取れてない、ペアを組む私のことを考えて欲しいとのことだ。俺的にも好きな人がいるし匂いに関しては充分に注意してるんだが酷い言われようだ。一度、洗濯物を持って代行業者に頼みに行こうとしたら、いきなり目の前に現れて「やめなさいお金がもったいないわ」と言われ洗濯物を奪われた。どうすれば良いんだ。
「しかも一面、イビル・ボアの血塗れになっちまった。さすがに村の近くだ。モンスター避けの魔符を発動しておいて、村の奴らに掃除屋に依頼するように言っておくか」
さすがにこんなに細かい肉片とモンスターの血の匂いがあると他のモンスターが寄ってくる可能性がある。ここが町や村からかなり遠い箇所だったら良かったんだが、少し村と離れたとは言えこの距離はまずい。仕方ないので掃除屋が来るまでの対策としてモンスター避け用の魔符を発動することにした。
魔符とは一定の魔力があれば一つの魔法を発動できる物。俺みたいに魔力はあってもろく魔法を使えない奴には便利な道具だ。俺が使ったこの魔符以外にも攻撃用の魔符もあるがかなり高価だ。とんでもないモンスターを退治するならともかく一々そこらへんのモンスター退治に使ってたら割に合わない。しかも許可制で
所持する理由、使用する理由等々を自分が登録しているギルドに報告する必要がある。
「そういえばイリスの方は終わったのか?」
魔符の発動後、イリスと別れた方向へと体を向けた。俺が倒したのはリーダー枠のイビル・ボアだ。こいつらは群れで行動するモンスターで他に数体、子分となるやつらがいる。リーダーは俺で子分の方はイリスへと役割分担した。一緒にいると統率が取れてかなり厄介なので引き離す作戦をとった。統率を取ったところで一人でも全滅できるんだが、下手に暴れられると近くにある村に被害が及ぶ可能性があった。それで俺はリーダー枠を、イリスは子分どもを担当という作戦を実行した。だいぶイリスと離れたが、あいつはかなり強いから心配する必要ないけどな。
「かなり離れちまったな……音もしねぇな、もう終わったのか?……一旦戻るか」
さっき倒したイビル・ボアの体は木っ端微塵になったので頭だけ担いで持っていくことにした。まぁきっちり討伐した証拠みたいなものだ。担いだまま森の中へ入っていく。何事もなく数分歩いていくと森を抜け村が見える場所にたどり着いた。村の方へ向かうと体と頭が綺麗に分かれたイビル・ボアの死体が綺麗に並べられていた。
「まぁ、きれい。相変わらず几帳面な奴だな……」
イリスの仕事ぶりにはいつも感心させられる。ふと村の入り口に目を向けると、そこには村の男達と何か話をしている美しい金色の髪で左側の方にまとめているのが特徴のイリスがいた。あいつ美人でスタイルも抜群だから結構モテるんだよな。愛想もいい……俺以外にはな。
「流石だなイリスもう終わってたのか。悪いが…」
「遅い」
会話の途中で悪いと思ったが声をかけさせてもらった。一応お互いの報告をしようと思ったが、いきなり不機嫌さが丸分かりな目付きと声を俺に浴びせてくる。ほんと俺には厳しいな……
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