第10話 兄妹のデート練習!?

お兄ちゃんがユキちゃんからの告白を保留にしたその日の夜。

私は瑠依花ちゃんと電話をしていた。



「どうしよう瑠依花ちゃん!?お兄ちゃん告白断らなかったよ‼ユキちゃんに取られちゃうよぉ!」



『落ち着いて星華ちゃん、諦めるのはまだ早いんじゃないかな?和真さんはユキちゃんの告白を了承したわけじゃないんだから、ね?』



「う、うん………そうだよね!チャンス、まだ、ある!!」



確かに、お兄ちゃんはまだ告白を了承したわけじゃない。だからまだ私にもチャンスはある。

私は瑠依花ちゃんの意見に賛同する。というか、そうするしかない。

しかし、私が賛同しても瑠依花ちゃんは言葉を返してこない。



「ど、どうしたの、瑠依花ちゃん?」



不安になって私から尋ねると、瑠依花ちゃんは『うん、やっぱりこれなら……』と呟いてから、ようやく話し始めた。



『星華ちゃん、私、この状況を利用するべきだと思う』



「利用?どういうこと?」



私は頭にはてなを浮かべながら尋ねる。



『星華ちゃん、和真さんがこれまでに何方かとお付き合いした経験は?』



「お兄ちゃんは誰とも付き合ったことないよ?」



『そっか、それならデートをしたことも?』



「いつも私と一緒だったから多分ないよ?」



いったい何の質問なんだろう?でも瑠依花ちゃんのことだ、何か良い考えがあるんだよねっ!

そして次の言葉に私は電撃が走るほどの驚きを受けた。



『星華ちゃん、和真さんとデートしたら良いんじゃないかな、ユキちゃんとのデートの練習ってことで』



でーと……デ、デデデデート!?!?

私がお兄ちゃんとデート!!それにお兄ちゃんも同意のうえで出来るの!?



「お兄ちゃんとデート………したい!したいしたいしたい!!」



『せ、星華ちゃん静かに!!和真さんに気付かれちゃうよ!』



「え?瑠依花ちゃん、これって気付かれちゃダメなの?」



そもそもこのデート案はお兄ちゃんにも同意してもらわないと成立しない。ならバレても良いんじゃ?というか、言わないと出来ないわけだし………。



『あ、違うよ星華ちゃん。私が心配してるのは、星華ちゃんの気持ちがバレちゃうかもってことだよ』



「あ、そっか!今バレちゃったらマズいかも!最悪の場合、デート出来なくなっちゃうかもだもんね!」



お兄ちゃんから見たら私はお助け役。そんなお助け役が自分から、デートがしたい!なんて言ったら、確かに超超超超鈍感なお兄ちゃんにも『もしかして』と勘づかれてしまうかもしれない。

そんなことになれば、きっとお兄ちゃんは遠慮して私とデートの練習なんてしないと思う。お兄ちゃんは優しいから私が傷付くようなことは絶対しない、本気に対して『練習』なんて………。





瑠依花ちゃんとの電話を終えた私はリビングに移動してお兄ちゃんと話していた。



「お兄ちゃん、ユキちゃんには保留って言ってたけど、これからどうするつもりなの?」



「そうだなぁ、まず俺はユキちゃんのことを全然知らないから、とりあえず知るところから始めようと思う」



ユキちゃんのことを知らないから、それはお兄ちゃんがユキちゃんからの告白を保留にした最大の理由だ。

となれば、『お兄ちゃんはユキちゃんを知ることから始める』と、私と瑠依花ちゃんも同じように考えていた。

そして大切なのは、ここから練習デートの約束へとスムーズに運ぶこと。

私は考えた順序通りに会話が進むように言葉を操る。



「どうやってユキちゃんのことを知るの?」



「ん〜、休日に遊びに行くとかじゃないか?」



「でもお兄ちゃん、デートとかしたことないでしょ?大丈夫なの?」



「………、正直、かなり不安だな。異性と二人でってのは星華以外に今までなかったからな」



よし、ここまでは計算通り。

今まで、というか今でもだが、お兄ちゃんの一番近くにいる私が持つお兄ちゃんの情報を最大限活かして練習デートの約束へと誘導している。

次に、私が『お兄ちゃんに恥はかかせたくないから、慣れるまで私がデートの練習に付き合ってあげようか?』などと適当な理由をつけて提案すれば、きっとお兄ちゃんは頷くと思う。

そして私がそう言おうと口を開いた時、お兄ちゃんが何かを決めたように一つ頷き、それからはっきりとした口調で話し始めた。



「なあ星華、次の日曜日って暇か?」



「え?うん、暇だけど………もしかして、デートの練習するの?」



「デートの練習?いや、蒼馬と瑠依花ちゃんとユキちゃんも誘って五人で遊びに行けたらと思ってさ」



盲点だった………。

確かに、考えてみれば、ユキちゃんのことを知るために一緒に過ごす必要はあるものの、二人きりでなくてはいけないわけではなかった。



「……ん?どうした、星華?」



「……なんでもない!むー、あとちょっとだったのに!」



まるでクリスマスに貰えると思っていたプレゼントが『今年はないよ』と言われた時の小学生のような気分だ。

要するに、『なんでなんでなんでぇー!!やだやだぁー!!行きたい行きたい、二人っきりでデート行きたいの!!!』と駄々をこねたい気持ちでいっぱいだった。

勿論、そんなことはしないけど………。

こうして、せっかく瑠依花ちゃんと考えた練習デート作戦は実現することなく失敗に終わったのだった。

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