5年後 ~エピローグ~

「ちょっと零次!」

 玲奈はいつも通りにノックすらなく、俺の部屋へと上がり込んできた。まあ、俺もカギは締めてないのだから、それをとやかく言うつもりもない。なにせ、この住居モードの"方舟"には、俺の家族か、お世話のアンドロイドしか居ないのだし。


「未だに亮二が人形遊びを続けてるんだけど? 気持ち悪いからやめさせてよ!」

 俺たちの二人目の子供である亮二が、以前の俺同様に、アンドロイドたちが行う"繁殖ケアプログラム"にハマっているらしい。

「アレはアレで、自分に自信が付く面もあるんだよ、もう少し見守ってやってくれよ……」

 俺の言葉に、玲奈は「気持ちわるい。絶対アンタに似たんだ」などと悪態をつきつつも、どうやら引き下がってくれたらしい。





 この"計画"を潰す。玲奈の掲げたその目標に引きずられるような形で、俺たちは共に行動した。

 まずは地球に帰る。この未開拓の星で、その手段を取りうるのは"方舟"を置いて他にはなかった。だが、"方舟"はこの星に着陸し、既に"住居モード"へと移行しており、このままでは宇宙航行どころか、飛び上がることすらできない。


 コントロールルームにあるマニュアルに隅から隅まで目を通し、操作パネルのあちこちをひたすらに調べ、更にはアンドロイド達を脅しつけ、ついに"航行モード"への移行方法が、同時に"燃料が無い"という新たな課題と共に判明した。

 その時には、既に諦めモードのアンドロイド達が、しぶしぶながら俺たちに様々な情報提供をしてくれた。



 惑星からの離脱と、離脱後の航路修正のためにかなり多くの推進用エネルギーが必要であること。

 住居モードは太陽光などで発電しているが、航行中は発電できない場合もあるため、十分な蓄電が必要であること。



 アンドロイド達から提示された条件を満たすべく、玲奈と俺は連れ立って、あちこちへと駆けずり回った。蓄電能力を上げるために太陽光パネルの増設をしたり、推進器の燃料である"エネルギー結晶体"を探すために、探知器をあちこちに設置しに行ったり、見つかった結晶体を掘り起こしに行ったり……。

 明確な目的、目標があったからだろうか、以前はヒステリックに感情を発露させていた玲奈も、淡々と落ち着いて作業をこなしていった。

 同じ目標で共同作業を続けた結果だろうか、最初は俺に対する当たりがきつかった玲奈も、普通に話すようになり、お互いに気遣い、手を貸しあうようになった。


 俺はこの時、どこか頭の片隅で"これも計画のシナリオなのでは?"という疑念はあった。俺たち二人は共同で作業を続けるうち、だんだんと打ち解け、わだかまりも消え、そしてお互いに男女二人しかいない状況で、寂しさを紛らわせるように体を求め合い、そして子供が生まれた。


 子供が出来た時、俺たちはつくづく"繁殖用生体"であり"普通の人間"ではないということを痛感させられた。玲奈は1回の行為で妊娠し、数日後には妊娠が判明。なんと2か月で出産してしまった。説明で聞いた"成長速度5倍"を実証する出来事が目の前で展開されたのだ。

 その子供も、驚くべき速さで成長した。子供の世話は基本アンドロイド達が行うのだが、子供は会うたびに成長し、5年経った今、一人目の子供である"初菜"は、既に成人と言って差し支えないほどだ。


 妊娠出産したことで、玲奈の中で何かが変わったのかもしれない。俺と玲奈はその後も数度関係を持ち、今では6人の子供がいる。今のところ、俺たちに目立った衰えは出ていないため、子供はこれからも増えるのだろう……。



 俺は窓の外、地平線まで続く赤土の大地を見渡しながら思う。


 俺だけでなく彼女も、これがシナリオで準備された結末だったと、おそらくは気が付いている。が、お互いにそれは言わないし、これからも言うことは無いだろう。人生は長さじゃない。俺はここでそれを実感したように思う。


 俺は、俺たちは、今幸せだからだ。

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衣替え彼女 ~季節で替わる美女(美少女)お隣さん~ たろいも @dicen

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