5.Re:精神的動揺を誘うのは戦術の基本

「気が付いたんだよ」

「えー、なにがっすか?」

 Smaaaaash!! 俺の剣士が画面外へドーン!!

「んがっ! ま、真緒ちゃんは確かに強い。が、しかし、絶対に勝つわけじゃない!!」

「そりゃ、あたしだって負けるときはあるっす」

 俺剣士のスマッシュ! をステップで回避からのSmaaaaash!! 俺剣士キラーン☆

「ぐふっ! そ、そう、だから! 次の対戦から1マッチ取られたら……、服を1枚脱ぐ!!」

「えっ!?」

 俺剣士のSmaaaaash!! 真緒ちゃんのピンク球体がぶっとび……からの復帰。

「えぇー、それで今日はそんなに厚着してたんすか……、零次さん、結構姑息っすね」

「ふははははっ! なんとでも言え!!」



「さぁ! 次のマッチから野球拳マッチ、開始だ!!」

「ヤレヤレっす」





 数十分後


「……。」

 おかしい。まだまだ暑さ残るこの季節。俺はこのために7枚も着込み、万全の態勢で挑んだ。そう、途中までは順調だった。特に真緒ちゃんのジャージ下を取れたのは大きかった。今もTシャツにパンツだけという背徳感全開な姿だ。だがそこで真緒ちゃんの中で何かのスイッチが入ったらしい。一切の恥じらいが消え、修羅のごとき戦闘能力で俺の衣服を次々に剥ぎ取っていった。俺は熟練ハンターを前に、狩られるだけの存在に成り下がってしまったモンスターの気分を存分に味わった……。


 俺はパンツに指をかけ、そして躊躇う。

「もういいっすよ、パンツまでは脱がなくて……、その、そんなに嬉しくないっすから……」

 俺の情けない姿に真緒ちゃんから温情の言葉がでる。「そんなに嬉しくない」という評価も、それはそれで微妙にへこむ。

「ぐぬぅぅぅぅ、せめて、せめてあと1回! あと1回でも勝てればっ!!」

 Tシャツにしてもパンツにしても、どちらを取れても俺はそれで満足できたと思う。あと1手、たった1手が及ばなかった……。浪漫とはかくも険しい道の先に存在するのか……。


「そ、その、あ、あたしの裸、そんなに、見たかったっすか?」

 真緒ちゃんは自身の姿を急に思い出したらしく、Tシャツの裾を引っ張ってパンツを隠しながら言った。

「ぁ……」

 元々の目的は勝負に勝つこと!!……だったのか? 真緒ちゃんの裸なんて、そんなもの、見れるなら見たいに決まっているじゃないか!!(微錯乱)

 いや違う、そうじゃない。いや違わないけど、そうじゃなくて、ストレート「見たい」と言っていいのか? 逆に考えるんだ、「見たくない」なんて言えるか? そのほうがよほど失礼じゃないか!

「……うん」


 真緒ちゃんは俯き、赤面したまま上目遣いで睨んでくる。相変わらずTシャツの裾は引っ張ったままだ

「し……、下着姿まで、なら……」

 そう言って、真緒ちゃんはTシャツをつかむ両手にさらに力を入れる。

「うぅぅ」

 真緒ちゃんは俯き、両目ぎゅっとつぶり唸っている。ものすごく申し訳ない気分になった。

「ごめん、その、いいから──」

「えぇぇい!」

 俺の言葉を聞くまでもなく、真緒ちゃんは勢いよくTシャツを脱ぎ捨てる。


「……。」

 "きれいだ"それが俺の感じた感想だった。ピンクで上下揃いの下着、その下着からふっくらと盛り上がる胸、すらりと細く艶めかしい曲線を描く腰と、形の良いおへそから柔らかそうなお腹を経て、ギリギリの位置で局部を覆い隠すパンツ。全てが美しく、そして日頃は服で隠されているためか、肌はきめ細かく透き通るような白さだ。

 俺はそれを見て本能の赴くまま、素直な要望を問いかけた。

「なぁ、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、触っていい?」

「絶対だめっす!!」

 せっかくの下着姿は、その言葉と共に隠されてしまった。

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