第15話

お元気ですか。って書くのもおかしいね。毎日お見舞い来てくれてるもんね。でもこういう手紙を書く機会なんてそうそうないから、この出だしで始めたかったんだ。

君は私の字が好きだと言ってくれた。私が好きだと言ってくれた。私、君のあの写真を見る眼差しに見惚れたんだよ。だから入部させて、少しでもきっかけを、君と仲良くなれるきっかけを作りたかった。だけど学年も違ったし部活もほとんど部室にいなかったから絡むこともなくて、引退、卒業してしまったなあ。

OB会で君が来た時はびっくり。だってそういうの来なさそうな顔してるもん。でもやっぱり君は静かに座って、楽しそうな顔一つしなかった。でもなんか視線を感じるな〜って思ってふと見ると、君が私を見てるんだもん。思わず笑っちゃった、嬉しくて。だって写真を見てた時と同じ眼差しで、私を見てくれてたから。思い切って君の隣に行って正解だったな。

だって君は私に素晴らしい日々をくれたから。君といた毎日が本当に、本当に、大好きで。


私はもうすぐお迎えが来ます。

君のことだから私がいなくなったら泣いちゃうでしょ?今も私の見えないところで泣いてるんでしょ?君、目に見えないけど感情豊かなんだからさ。もうすこし表に出してもいいと思うよ。


これからは、『私』を撮り続けてください。かつて君が『君』を撮ってきたように。『私』という人間は君の中で生き続ける、君のカメラの中で生き続けるよ。

私、君が大好きだよ。

今までありがとう、そしてこれからもよろしくね。

またね。


もう一枚の紙切れ。


P.S. お父さんのように思い出になんかしないでね。

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