第12話

彼女は癌に侵されていたのだ。

『喉頭癌』

彼女の喉に癌細胞がいるのだ。メールの中の彼女は元気そうに、『大丈夫!手術すれば治るよってお医者さんも言ってくれたし!心配かけてごめんね。また撮影しようね!』と僕に言っていたが、果たして泣いてはいないだろうか。あんな華奢な肩を震わせながら、1人で閉じこもってはいないだろうか。

僕は、病院名と室番を聞いて、お見舞いに行くことにした。遠くの病院だからいいよ、と彼女に言われたが、なんとしても彼女に会いたかった。


病室の彼女は、メール通り元気そうだった。久しぶりに見た彼女の字に僕は心を揺さぶられ、突然彼女を抱きしめてしまった。彼女は一瞬びっくりしてから、僕のことを抱きしめてくれた。あったかかった。

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